(ヒロイン:患者)

「おーい、入るぞー」
「えっ」
「お、いたいた」
「そんな簡単に入ってきて貴方本当に先生ですか?」
「俺は外科部長だぞ?」
「この病院大丈夫かな・・・」
「つーか今は恋人のお見舞い中」
「勤務時間中ですよね、お医者さん?」


ニィ、と笑うのは私の主治医黒尾鉄朗。ここの病棟の一番偉い人らしい。そして私の恋人である。そんな黒尾鉄朗は私のベッドにギシッと音を立て座った。右目はほとんど前髪に隠れてるしほんと医者だと思えない風貌。


「体調はどうだ?」
「それ、朝の回診でも聞いたよね?」
「あー・・・じゃあ点滴はちゃんといってるか?」
「さっき夜久さんが替えてくれました」
「夜久が来たのか・・・」
「夜久さんが仕事しないって怒ってましたよ?」
「えー、ちゃんとしてんのに」


そんなこといいながら日中ほぼ私の病室に居座ってる。PHSに電話がかかってきたときだけそこから離れる。お昼も「この飯味薄いな」なんて言いながら私の病院食食べてた・・・この病院ほんとに大丈夫かな?


「つーか心配なんだよ」
「そうだよね・・・・・・ごめんね、心配かけて」
「あーいや、違う。責めてるわけじゃねぇんだ」
「でも私のことが気になるでしょ?」
「・・・俺が近くに居るのにお前の病気に気付けなかった自分に悔しいんだよ」


鉄朗は白衣を脱ぎ、近くにあった椅子にかけ、私の横に寝転んだ。普段のニヤニヤした自信家の顔は何処へやら眉毛を少し落とし悲しそうな顔をしている彼がそこにいた


「・・・外科部長なんてそんな偉いポジションについたところで大事な奴の1人守れなかったら意味ねーじゃねぇかよ」
「んー、でもさ、鉄朗、守れてるじゃん」
「なに?」
「今朝ね顔のこわーい外科部長さんが回診に来て、順調ですよって言ってた。ちゃんと治ってきてるって。ほら、守れてるじゃん、私ちゃんと生きてる」
「・・・・・・顔の怖いは余計だ」


鉄朗が私を抱きしめた。きっとこれは照れ隠し。身体に影響でないように優しく抱きしめてくれるのは優しさか、それとも躊躇かはわからないけど、それでも190cmの彼がなんだか可愛く見えてゆっくり頭を撫でた


「私ね、実は病気のことは心配じゃないの」
「・・・どういうことだ」
「鉄朗が絶対治してくれるって信じてるから、心配じゃない」
「俺の心配損だな」
「せんせーは沢山心配してください!」


私が笑うと、彼も負けたように小さく笑った。そう貴方にしょぼくれた顔は似合わないよ。鉄朗は身体を起こし次は鉄朗が私の頭を撫でた


「次の検査で問題なけりゃ退院だ」
「ほんと?やった!」
「退院祝いは何がいい?名前チャン」
「え、お祝いしてくれるの?」
「そりゃ闘病したわけだからよく頑張ったなぁっていうお祝いしねーと」
「だったら鉄朗も一緒にしないと。私の病気を治してくれたお祝い」
「・・・お前には敵わないな」
「ふふ、そう?」
「あぁ・・・・・・あー、じゃあ俺の頑張ったで賞は一つお願いがあんだけど」
「ん、なーに?」


鉄朗は立ち上がりさっき椅子にかけた白衣のポケットから小さくおりたたまれた紙を出し、丁寧にそれを開き、私の前に差し出した


「これにサインしてほしい」
「これって・・・・・・」
「退院したらすぐに出し行こう」
「ちょ、ちょっと待って、鉄朗、」
「結婚しよう、名前。こんなとこで言うつもりなかったけど今回の病気でよくわかった、俺にはお前がいないと困る。すげー不安になる。一緒に居たい」
「と、突然すぎて頭がついていかないんだけど」
「駄目か?」
「・・・駄目じゃない、ですけど」
「あー指輪買ってねぇから退院したらそれも買い行くぞ」
「じゃあそれ、私への退院お祝いね」
「・・・指輪でいいのか?」
「十分すぎデス」
「つーかじゃあオッケーってこと?」
「・・・・・・うん」
「あーもう焦った、好きだ、名前」




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