(ヒロイン:入院患者)


「やっほー名前ちゃん、こんなとこで会うなんて偶然だねぇ」


ここはhigh kyu病院。私はここにお世話になっており、小さな頃から入退院を繰り返していた、そして今は入院の時期。入院とはほんとに暇なもので、暇つぶしと糖分欲しさに病院内のコンビニに来たらこの人がいた。私の主治医であり、胸部心臓外科の外科部長、つまるとこ胸部心臓外科の医師のトップ、及川徹が。


「先生を見たら胸が・・・いたたた」
「なになに、及川先生みたらドキドキしちゃった?」
「・・・医者なら心配しなよ」
「主治医俺だしね、名前ちゃんの心臓なら手に取るようにわかるよ」
「やだな、それ」


この及川徹という医師は顔はイケメン、身長も高い、しかも医師ということは頭も良い、外科部長というポストもある、天は二物も三物もこの人に与えたのだ。なんと羨ましい。私は小さい頃からこの人のお世話になってるからもう免疫はついたけど、外来の患者さんや初めて入院してきた人たちが黄色い声を上げているのは日常茶飯事。


「名前ちゃん何しにここに?」
「暇つぶし・・・と、甘いもの買いに」
「お!甘いものいいねーどれが良い?及川先生に言ってごらん、好きなものを買ってあげよう」
「えっ、いいですよ」
「コラ、遠慮しないの。及川先生、お金は持ってるんだから!」
「うわぁ・・・・・・じゃあこれ」
「うんうん、おっけー。外で待っててねー」


そうかお金持ちというオプションもあった。なんだこの人最強か。
周りの人より頭ひとつ出てる先生を見つけるのは容易くて、レジを終えた及川先生がニコニコしながらこっちに来るのがわかった。黙ってればかっこいいのになぁ・・・


「はい」
「ありがとうございます」
「お礼に及川先生のお昼に付き合ってね!」
「えっ・・・自分で買えばよかった・・・」
「そんなに俺といるの嫌!?」
「冗談ですよ」
「俺とお昼食べれるなんて胸張って言って良いぐらいのことなのに・・・」
「言いませんよ・・・お昼にしては遅いですね、もう夕方ですよ」
「あー、手術が長引いちゃってね」
「あぁ・・・お疲れ様デス」
「ううん!名前ちゃんとお昼たべれたからチャラかな!」


見た目も軽そうだったら口も軽くて。嬉しそうにオニギリ頬張る先生を私はチョコレート食べながら見つめていた。
この欠点のない医師に私はいつも翻弄されてて、小さい頃から淡い恋心抱いてることなんてこの人はきっと気づいていない。これだけ完璧だったら女性も黙ってないだろう、彼女の2人3人くらいいるだろうな。看護師さんがわざわざこの科に転属届けを出した、なんて噂も聞いたことがある。


「及川先生くらい大きいとオニギリも小さく見えますね」
「そうかな?」
「手も、大きい」
「あーバレーしてたからねー」
「バレー?」
「うん、これでも宮城県1のセッターだったんだからね!」
「先生・・・嘘はダメですよ」
「嘘じゃないからね!?」


運動神経も良いというオプションが加わり、もう本当にこの人は最強だとわかった。運動神経くらい悪くても良いのに、たとえこの人がバレーができなくて顔面でボールを受け止めても持ち前の愛嬌で切り抜けるはずだ。こんなルックスの人が汗水流してスポーツしてたら惚れるよね、絶対。学生のころからキャーキャー言われてきたのか・・・なんかむかつく


「こら、そんな顔しないの。可愛い顔が台無しだよ!」
「・・・うざ」
「岩ちゃんみたいなこと言わないで!あ、岩ちゃんに聞いたら俺がすごかったことわかるよ?」
「イワチャン?・・・あ、岩泉さん?」
「そうそう、岩ちゃんとは高校一緒でバレーも一緒にしてたからわかるはずだよ」
「岩泉さんがバレーか・・・かっこよかったんだろうなぁ・・・」
「ちょっと!及川先生のほうがかっこよかったんだからね!」
「及川先生はかっこいいですよ」
「えっ!・・・そ、そうかな。なんか名前ちゃんに言われると照れるな」
「及川先生が照れると気持ち悪い」
「台無し!」


もう、とプリプリ怒りながら気がつくと3つ目のオニギリを開けていた。オニギリ好きなのかな。
及川先生がバレーをする姿を想像してみたけどきっと試合前に他校の女の子に囲まれていたんだろうなぁ・・・それで岩泉さんに怒られて・・・・・・今とそんなに変わらないじゃん


「バレーかぁ・・・」
「そろそろ及川先生がかっこいいって認める?」
「認めません。だけどいいなぁって」
「??」
「ほら、私昔から心臓悪いじゃないですか、だから運動とかほとんどしたことないから・・・及川先生から制限されてるからわかると思いますが」
「あぁなるほどね・・・名前ちゃんは運動していいって言われたら何がしたい?」
「何・・・・・・・・・・・・バレー、とか?」
「なにそれ!名前ちゃんかわいい!」
「うるさいです。ちょっと興味が湧いただけです」
「そっかそっか、よし!名前ちゃん小指出して?」
「小指?」
「ん、俺、及川徹の名にかけて名前ちゃんの病気は絶対治す。そして治ったあかつきには俺がバレー教えてあげる。はい、指切り」
「・・・・・・治るの?」
「もちろん俺1人の力だけじゃダメだけど、俺には信頼するチームがある。だから名前ちゃんと俺を信じて?きっと君がバレーできるような体に治すから」


いつもヘラヘラしてる顔だけど時折出すこの顔に私は抜け出すことができないんだ。命の恩人に初恋をし、その初恋を拗らせた私はいつまで経ってもこの人に恋し続けるのだろう。胸部心臓外科医、及川徹に。




(「約束破ったら私とデートしてくださいね!」(「えぇーじゃあわざと破ろうかな」)(「及川先生・・・」)(「じ、冗談だよ!治ったらデートもしよ!」)

151030


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