「何もみえねえ、わからなくなっちまった」

ぶつりと呟いた男の顔が濡れている。ぼろぼろと涙を落とすだけの静かな泣き方はどうも男らしくなかった。もう言葉も出ないらしくそれきり呟いて後は押し黙って泣いている。この男に何を言えば良いのかを考えていたから、不意に押し倒されたのに反応出来なかった。畳に打った背中を撫でる間もなく男が覆い被さってくる。

「毛利が憎い。でも殺す事は無かったんじゃねえかって思っちまう、確かにあいつらは毛利に殺された。でもあれは俺のせいだろう、俺が甘かった、せいだろう」
「元親、」
「わかってんだ、散々言われたことだ。俺は甘い。俺は俺を認めたくないばかりに毛利を殺したんだ」

胸元に顔を埋めて泣く男が不憫でならない。優し過ぎるこの男が。しがみつくように巻き付く腕が愛しくて悲しくてその白髪に顔を押し付け抱いた。少しだけ泣いて、そしたらまた同じように笑えるから。

120104
鬱ルート泣けます。
プレゼントするには鬱すぎたのでこちらに
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