虎が雄々しく首をもたげて吠えている。筋肉の隆起に従って動くそれを、布団に潜り込んだままぼんやりと眺めていると、持ち主が振り返って眉をひそめた。何や、起きとったんか、なんだかそんなようなことを言っているけれど、寝起きの頭では言葉をとらえるのが精一杯で、返事なんかとてもじゃないが無理だ。喉の奥から吐息のような音が漏れる、そんなものでも冴島さんにはわかるようで、顔をくしゃりとさせた。それからどんな顔するのか見ていたかったけれど、瞼の重さに耐えられなくなって目を閉じる。掛け布団をめくって冴島さんが隣に滑りこんでくるのがわかった。こたつのようにぬくい布団の中に、一瞬ひやりと外気が侵入してきて、何も考えずに目の前の熱源に体をひたりと寄せる。お互いに薄着だと、体温どころか肌の質感まで伝わってくる。自分のいいようにごそごそと身じろぎすると、抱き込むように腕が回ってきた。


「学校はええんか?」
「……午後から行く…」


今はとにかく動きたくない。肩の緩やかな流線に額を沿わせてぎゅうと押しつけた。冴島さんの大きな体に包まれて縮こまるのがとてもすきなわたしの本能は、この中だけは絶対に安全だと知っている。


「……さえ、じまさんは?」
「今日はなんもないで」
「…そ」


何かを考える余裕はもうなかった。ただ眠くてたまらなかった。
頭の片隅で、そういえば今何時なのか気にかかったけれど、もうそんなことすらめんどうで、目を閉じてしまった。






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