今こそ、こいつを泣かせてやれる誰かか、保身じゃなくちゃんと否定してやれる誰かの代わりに、死んでしまいたかった。俺の時もこんな顔してくれるだろうかなんて考える浅はかな俺なんかよりもっとなまえにそぐうような人間はいたはずなのに、止める間もないまま一人、また一人と灰になって消えた。あ、となまえが短く発する。


「やっぱ無しな、だって俺が死んだら大吾泣くもん」


誰ん時でもほぼ泣いてたけど、と柵に両腕をそっくり預けたまま、なまえは顔だけを俺の方に向けた。笑っているのに、唇が強張っている。変に力んでいるせいで、目もとが今にも崩れそうだ。


「…ああ、だから思いつきでだって死ぬなんていうな」


他の一切がどうなったって、なまえだけは死んではいけない。代わりに俺が死んだっていい。だからどうか神とやらがこの荒んだ町にもいるなら、と見上げた空はネオンのせいで星一つ輝かない闇で、神様はあんなところにはきっといやしない。こんなにも淋しいのに、こいつを喪えばどうなってしまうだろう。酔っているわけでもないのに、そのうちふらりと落ちていってしまう残像がちらりと頭をかすめ、俺は折れそうな二の腕を掴んで引き寄せた。そう誂えてあったように、なまえの頭が俺の左胸に添う。


どちらからともなく囁いた、お前だけは死ぬな。いったいどちらのものだったろう。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -