やっぱり降ってきた。
朝、折り畳みじゃない傘を持って来るのはかなり目立っていたけれど、良かった。
園は四十万谷と帰るだろうし。二人とも傘を持ってないなら、園もお母さんを呼ぶと…あ、四十万谷ドンマイ。
四十万谷は園のお母さんを苦手としてる、みたい。園への過保護っぷりを怖がっていた。
まぁでも、園一筋だって言いながら違う女の子と仲良くしている四十万谷が悪い。それくらいは償わないと。
靴箱で靴を履き替えて、軒下に出て傘を開く。
そこで、すぐ傍にクラスメートの久保屋史岐が居ることに気がついた。
「あれ、一人?」
「そっちこそ。」
もしかしたら、四十万谷を園の所まで押したのは久保屋史岐だったりして。
そんな想像をしながら、少し笑う。
「潮。」
何?と視線で聞くと、久保屋史岐の苦笑いが見える。
その意図が読みとれなくて、どこか園を思い起こさせる。
「傘に入れて頂けませんか。」
「あ、そういうこと。」
「そーゆーこと。」
頭が良い人にそう言われると、なんだか馬鹿にされた気分になる。久保屋史岐は、確かこの前の模試も上位に入っていた。
周りに生徒も居ないから良いか、と傘を傾ける。
「…俺って最低だな。」
「ん?」
「四十万谷利用したかもしれない。」
言ってる意味が分からなくて、もう一度首を傾げるけど、再度苦笑されてその話題は終わる。
雨は小雨のまま。晴れることも無いけど、強くなる気配も無い。
静かに久保屋史岐は隣に来て、傘の柄を握った。
「んじゃ、帰りますか。」
小雨の午後を歩き出す。
策士達の帰り際
友人を使って想い人の連れを外したなんて、口が裂けても言えない。
20120506
久保屋史岐は潮桜のことを想ってたりなんだったり。