頭が痛い。死にそう。吐きそう。
世界が嫌いだと叫んでしまいたくなる。
恋人に別れを告げられて泣いて喚いて、挙げ句の果て熱まで出すなんて。
ベッドの上で寝返りを打っては頭を痛め、涙を滲ませては世界を歪める。
世界の全てが敵になって私をグチャグチャにしていくような気がして、そこで想像を止める。完全に思考回路が病んでいる人だ。
玄関の方からガチャガチャとドアノブが回る音がして、扉が開いて閉まった音も聞こえた。
ああ、そういえば鍵をかけていなかったかもしれない。
あれ、でも自分で開けた記憶もある。どうして開けたんだっけ。重要な所が抜け落ちてる。
足音は寝室を通り越してリビングに向かった。
強盗?110番?右手が無意識に携帯を探す。
今電話して警察は来てくれるかな。午後五時。それよりも先に見つかったら?
朦朧とする意識の中、あーでもないこーでもないと必死に考える。
熱っていうのは途轍もなく不思議で。
…自分で捕まえた方が早いかもしれない。
そんな考えに行き着かせてしまうのだから。
勿論、私は運動は人より出来たとしても熱を出していて、もうずっと泣いてたくらいだから精神面はズタボロで。
どこかで期待していたのかもしれない。
悪い人じゃない、と。
ヨロヨロとベッドを出て扉を開けると、鰹の出汁の香りがした。
ふと、お母さん?なんて有りもしないようなことが頭をよぎる。
お母さんは幼い頃、癌で亡くなっているんだから。
一応武器に、と近くの灰皿を取ってリビングに近づく。
リビングの向こうのキッチンに人が立っていた。背が高い。でも、エプロンをきちんとしている。
私の期待は強ち外れては無かった。
おじやを作っているみたいで、一層お母さんに見えてくる。
近づいて、後ろから抱き付いた。その弾みで、頭をガコンと換気扇に打ちつけたらしい。
「うぉっ、てめぇ…、」
あ、怒った。
「お母さん。」
なんか恥ずかしくなって誤魔化すようにそう言うと、
「お母さんんん…!?」
「ありがと。」
心細かったの。寂しかったの。
幼なじみの恭一郎は、溜め息をひとつ吐いてまた料理を始めた。私はひっついたままで良いのかな。
でも、離れがたくなって暖かくて大きい背中にくっついたままでいた。
いつも傍に居てくれてありがと、と心の中で呟いて「ママ、体堅いね。」と言うと「最近筋トレ始めたのよ。」と返ってきた。
君熱
をで
あ誤
た魔
た化
めし
てて
20111208
わぁもうすぐで2011年も終わるなぁ。色んなことがあった年だったなぁ。幼なじみの恭一郎くん。もう少しで灰皿で殴られるところだったね。はぁ、危ない。
★
恭一郎くん視点