あの女は時折、泣きそうな顔をして微笑んだ。


「狼が人間に成りたがった、成り損ないの狼男が。」


ゴブリン達がそう囃したてるのにも、耳を貸さずに俺の手を握ってる。


成り損ないの狼男。
俺が目指したのは、人間の姿。

お前に合うような、そんな人間の男。


目指した姿とは違って、夜には半分狼の姿に成ってしまう。

人間のように、理性を保てない。

時折、お前を八つ裂きにして腑をグチャグチャに切り刻んでやりたくなる。

そんな気持ちを押し殺して、握られた手を潰さないように握り返す。


「馬鹿な女。狼男は人を喰べて生き長らえる。
あの女もいつかは喰われるんだ。」


そう言ったゴブリンを睨む。
逃げた奴の背中を見て、お前は笑った。


「何が可笑しいんだよ?」

「嬉しくて。」

「意味分かんねぇ。」


舌打ちをする。

嬉しいのなら、もっと嬉しそうに笑えよ。


「…馬鹿な女って言われて、腹立つだろ。」

「うん、ありがと。」


肩口にお前が額を付けてくる。

途端に、その白い首筋に噛みついて食いちぎりたい衝動に駆られた。


「触んな。」


手と体を離すと、磁石のようにくっついてきて、ムカつく。指の間を縫って手を絡ませられた。

俺は───


「朝日だね。」


お前は眩しそうに、昇る朝日に目を細める。

脳裏に、お前によく似た顔が映った。


───一度、人間を喰った。













20111031


あとがき。
狼男目線だよ。ついにやっちゃったよ、もうグダグダだよ。
ハロウィンに間に合った。
本当にね、こんなことばっかしてて良いのかね。お前進路は?って言われたら、無言で突き通すよ、笑顔もつけて。
何言いたいんだか、自分でも分かりませんが。

兎に角、非恋だよなーと思う(笑)

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