バクが食べる。






「怖い夢見た」

はあ?

時計が示すのは午前四時。新聞屋のバイクの音が外から聞こえる。

放心状態に陥った姫を戻したのは、電話の向こう側。

「バクっているでしょう? あの、夢食べる」

「あー、いたな」

「あれって、悪い夢は食べないの?」

「さあ…かなりどうでも良いんだけど、俺もう寝て良い?」

欠伸を噛み殺す。

それに気付いたらしい菫は口を噤む。こんな時間に電話を掛けるってのが可笑しいという常識は持ち合わせているらしい。

「おーい、返事はー」

「姫が悪夢見ますように」

「菫ちゃん、電話出たのだけでも有り難いって思えないの?」

「思ってるもの。一条も鑑さんも出なかった」

最後かよ。欠伸が溜め息に変わる。

外は薄暗い。眠たい、あと三時間は余裕で眠れる。

「菫ちゃん、家出てこれる?」

「うん?」

「早朝の散歩に付き合ってアゲマスヨ」

その時に、悪夢の内容でも聞くか。

ありがとう、とまだ少し眠そうな菫の声が電話越しに聞こえた。







20130710







[mokuji]






 

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