嘘のような誠



「まさか梛雪が親戚になるとはね」

血縁で言ったら全くだが、これから関わる機会は幾度かあるだろう。麦野はホテルのロビー近くの柔らかいソファーの背もたれに寄りかかる。

「そしてそれを今の今まで俺に黙ってるとはね…」

「哀愁漂ってるよ。それに麦野、泰さんが元ヤンだって知ってたでしょう」

「知ってるもなにも。まず、どうしてわざわざ梛雪に一条の話をするのかが分からなかった」

「私知ってるんだから、泰さんが口止めしてたって」

まあ確かに。

理由を聞いたことはないが、梛雪は昔からヤンキーとか不良とか道を外れていくような人間が男女問わず好まないらしい。

「いつ知ったって、結果はこうなってたよ、きっと」

「いや、最初に夜露死苦とか言われたら流石に麦野の親しい人でも話したくない」

「…だってさ」

後ろから近付いてきていた泰に言う。
少し驚きながら梛雪は振り向き、唇を尖らせた。

「今悪いのは知ってて何も言わなかった蘿蔔さんですよ」

「ちゃんと黙ってやってたのに。その言い様」

「泰さん、用事終わったの?」

「はい、車持ってきますね」

なるほど。梛雪の前では良い子面らしい。

泰の背中を二人で見てから、梛雪が口を開いた。

「何の話だったっけ? 脱線しすぎて分かんなくなっちゃった」

「うん、まあ兎に角、結婚おめでとう」

前に好きだった人を祝うのも、悪くない。







20140715
(結婚を祝うとき)






[mokuji]






 

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