お天気おねーさん
──────今日の午後から小雨が降るでしょう。
「蘿蔔さん、傘持って行ってくださいね」
「え、折り畳みで良い。30パーセントなんて殆ど降らないも同然」
「駄目ですよ、ちゃんと普通の傘持って行ってください」
ネクタイを締めながら忙しげに泰が蘿蔔に言う。
雨が少しでも降りそうものならいつもこの会話だ。
いやしかし、何故か今日は違和感がある。
蘿蔔はソファーに座りながら立て膝をついた上に腕を乗せた。リモコンをゆらりゆらりと揺らす。
「あ、そういえばこの局の天気予報は信じないんじゃなかった?」
「はい?」
バタバタと朝食の分の皿を洗い始めた泰がテレビに視線を移す。
「ああ、代替わりしましたから。お天気おねーさん」
お前はお天気おねーさんで判断していたのか。
「梛雪に言っとこう」
「お坊ちゃん、朝から人なんて殴りたく無いんですが」
「発言が元ヤン」
天気予報が終わって占いのコーナーに入る。
興味は削がれて、蘿蔔は折り畳みを鞄から出した。
「折り畳みだと相合い傘出来ませんよ」
「は? 誰と? 櫻井と?」
あれ、こんな会話を前もしたような。
デジャヴだ。
「柘榴さんと」
「柘榴さんが折り畳みを持っていない確率の方が低い」
一位やぎ座。
この占いと、どっちが低いのか、蘿蔔は五分程考え込んだ結果。
「絶対降りますから」
得意気な顔の泰に心の中で舌打ちをしながら、傘を持った。
(ある朝の出来事)
20131010
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