ほっとけない弐
隣のベンチに座った女が急にガサゴソと鞄を漁りだした。
何か探し物か? 姫は腕組みをしながらそれをガン見していたが、こちらに気付く様子もない。
鞄から覗く資料やらファイルが折れそうになっている。
肩より少し長いその黒髪が菫を彷彿とさせて、なんだか放ってはおけない気持ちになる。
しかもスカート捲れてるし。今通った奴、ぜってー見てた。
お節介を焼くのは性に合わないが、その髪型故か。
「…ちょっと、」
「はい?」
初めて姫に気づきました、と言う顔。
「少しは周り見ろよ、すげースカート捲れてますけど」
持ってきていた紅いブランケットを膝にかける。もう新しいものに新調しようと思っていた。
「え? あ、ありがとうございますっ」
「いーえ、じゃあそれやるから」
腕時計を見る。周りに菫も一条の姿もないのを見ると、南口に居るのかもしれない。
「そんなの悪いです、なんか代わりに…」
「いらねーから」
鞄を持ってその女性を見た。
あ、違うな。うん、似てたのは髪の長さだけだった。
少し心の中で反省して、姫は南口へ向かった。
(姫が彼女Aを重ねたとき)
20130928
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