しずむ。




息を止めて10秒、真っ白な頭にあなたのコエ。
「大きな銀行があって」
ギンコウ?呆けた頭にあなたのコエが意味を為さずに響く。
「明日が、ワインを」
何を言っているのか理解できない。光の溢れる場所だった。静かで眩しくて白い。少し離れたとこにいるあなた、逆光であなたの顔は見えない。なんとなく心細くて近づいてみた。あなたってこんなに背が高かったかしら。見上げるとあなたは優しく微笑みあたしの瞼に大きなその手を翳した。バランスを急に喪い、身体がふらついた。よろけたように左足が浮いて、体勢を保とうと足を下ろしたところはひどく不安定な場所で、重心が後ろにずれたあたしは物理的な力によって後頭部を地面にぶつけた。少しの浮遊感を感じる間に覚悟はしていたのだけれど、地面というのはあたしが思っていたものよりもはるかに軟らかくて、痛みはなく少しの衝撃があっただけだった。上からまたコエがする。「地球軌道の22時は」全くあなたの発する言葉の意味がわからないままあたしは自分の重みで徐々に地面に呑み込まれていく。腕が、腰が、踵が、後頭部が、ひんやりとした地面と一体になるようにして埋まっていくのがわかる。どうしようかしら 、ああ、耳が埋まってしまった。あなたのコエが聞こえない。
「たすけてください」
あなたは驚いた顔であたしを見て、ゆっくりとした動きで優しく手を伸ばしたけど、あたしの右手があなたの左手に触れる前にあたしは沈んだ。だいすきです。言うと涙がでた。軟らかい地面に沈んだあたしは、きっと美しい。





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20120711
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