心中の響きが。




雨の日、コンビニの駐車場。フロントガラスに雨粒が弾けてけたたましい音を放つ。街路樹がしなっているのをまるで水槽ごしに見るみたいに見ていた。こんな日に外に出る奴は絶対変だよと笑いながら手を握る。

「どこに行こうか」

脂っこいパンと、適当な飲み物。さっき調達した食料をもそもそとかじりながら、ぼんやりとそう呟く。車の中は密室。二人の空間、心地が良いと思った。

「どうする?」

別にどこに行きたいわけでもない。行く気もない。どうだっていい、ずっとここにいたって。二人でいれさえすれば、そう言おうとした唇を慌てて閉じた。私ばかりが想っているのは、ずるい。

「海、とか」

冗談だと笑う。こんな日に海だなんて。本当に危険だよと笑って言う。冗談だともう一度言った。目を伏せて俯きがちに笑うと、左手に感じるあたたかさがぎゅっと力をこめる。私の手を握り直す。

「いいよ、海、行こうか」

危ないよ。うん。
手を握り返す。

「心中しようか」



「きみとならいいよ。心中したって」


足元を見ていた視線を上げて、同乗者の顔を見ればいたって平静で。もちろんそんなこと冗談に決まってると思いながら不安になる自分がいて。でも私だってあなたとなら、と、言いそびれて唇を噛んだ。

「だめだよ…」

力なく言い返すと、あなたは眉を下げて微笑んで、冗談だよと私を抱きしめた。ずるい、ずるいな。私ばかりがあなたを好きなことはわかっているのに、まるであなたも同じくらい私のことが好きかのように振る舞うから。


雨の日、コンビニの駐車場。フロントガラスに雨粒が弾けてけたたましい音を放つ。私を見つめるあなたを、まるで水槽ごしに見るみたいに見ていた。






fin
___________

本当は相思相愛
被害妄想というやつ

20120710


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