※首締め/中出し/無理やり?のようなそうでないような
束縛鳴電気くんに疲れて別れを切り出す話なのでいろいろと閲覧注意














「なんで?」
 
こう言われるだろうな、と思っていた。
その問に対して、彼が納得してくれそうな答えをわたしは出せずにいる。もう好きじゃなくなったとか、他に好きな人ができたとかだったらどんなに楽だっただろう。
好きな人なんて今でもずっと電気なことには変わりないし、他に好きな人なんてできようがない。彼以外に恋に落ちたりできるほど深い関わりのある男の子なんていない。なんなら、クラスの女の子ですら、友達だと気兼ねなく呼んでいいのかも最早わからない。そうやって電気以外との人間関係が希薄になっていった訳も、電気と交際を続けているからこそのことだった。
 
「別れたいの」
「いやそれは分かったけど、なんで? 俺はまだこんなに好きなのに」
 
まだこんなに好きであることが、別れない理由になると思ってるような顔だった。実際には、どちらかが継続することを拒んだらそれは終わりの始まりだというのに。
 
「好きじゃなくなった? おれのこと」
 
いつも表情豊かな彼から珍しく感情が読み取れず、焦りが身を縮こまらせた。怒るでも泣くでも悲しむでもなく、ただわたしに理由を問い質そうとしている。
理由ならあった。
思えば付き合い始めた時、位置情報把握アプリを互いに入れようとしたところからわたしはおかしいと思うべきだったのだ。最初こそ、流行りものに聡い電気のことだから、とこれもその流行に乗っかりたかったのだろうと受け入れた。蓋を開けてみればどうだ、電気と一緒にいない時に行った場所について5W1Hすべて知りたがったし、彼の目の前で誰か友達といようものなら会話に割り込んで何を話していたかを探り出した。そんな彼の束縛や依存に息苦しくなったというのは、充分な理由ではないだろうか。
 
「ううん、すきだよ」
「ならいいじゃん、な?」
 
両肩を掴んでわたしの瞳を覗き込むとそう言った。唇が重ねられて、なし崩しにこのまま話をなかったことにしようとしているのが透けて見えた。

「ん、話終わって……な、っ」
「終わっていーっしょ、んな話」

どうしても話を終わりにしたい電気と、流されたくないわたし。
咥内で蠢く舌は流されてしまえと囁くかのように舌の裏や歯列をなぞった。本当に終わりにしたいのなら、こんな話を電気の部屋にふたりきりで人目のないところでするべきではなかった。

「……っ、は……」
「可愛い、なまえ……めちゃくちゃ好き」

うっとりとした目でわたしを見下ろす電気が正気なのかそうでないのか分からないことで、背後を冷たいものが駆け抜ける心地にさせられる。
好きだ、とうわ言のように呟くくちびるがわたしの肌を這うと肩が揺れる。このままでは本当に話を終わらされてしまう。電気の胸板を強く押して抵抗しようにもそれ以上の力で引き寄せられ、無駄に終わってしまう予感が絶望を伴って訪れようとしていた。

「なぁ、俺のこと嫌いんなった? 俺とエッチすんのイヤ?」

本当に彼と別れたいのなら、嫌だと答えるのが最適解のはずだ。
しかしどうしたことだろう、情なのかなんなのか、彼のことを嫌いだと言うことも拒むようなことを言おうにもくちびるが思うように動いてくれない。
わたしは彼のことを心底嫌だったのか、疑問に思えてくる。

「な? イヤじゃねぇよな?」

その黄金(こがね)色の瞳には確かにわたしが映っているのに、視線が合っている気がしない。
それなのに手つきはいつもするみたいに優しく、ゆっくりわたしの衣服を取り除いてゆく。それが却ってこわくて、彼から目が離せない。
あまりにも幸せそうな顔をして笑うから、本当についさっき別れ話を持ちかけたのが夢だった気さえしてくる。

「あ、っあ……待っ、やめ」
「なまえの『やめて』は違うんだもんな、俺知ってるもんね」
「っっん、う……」

胸の尖った中心を口に含みながら、慣れた手つきで全身を弄る。冷えていたはずの身体が無理やり体温を上げられていく。今回の「やめて」は本気のそれだって思っているはずなのに、最初からそうではなかったかのように反応していった。

「あーほら、違うんじゃん。な?」

ぐちゃりと音を立てたそこには電気の指が突き立てられていて、これからすることへ期待するように蠢いて蜜を垂らしていた。電気と過ごしてきた期間分、そうなるようにと覚え込まされてきたのだ。

「もう、いいよな……」

問いかけているようでありながら答えなど待たず、下半身だけむき出しになるとひと思いに奥までそれが入ってきた。

「え……あっ、……、〜〜〜っ!!」

一気に呼吸が苦しくなり、反射的に肺いっぱいに辺りの空気を吸い込む。眉を寄せ、電気の顔を見る。相変わらず満足そうな顔で、先程のことなどなかったかのように微笑んでいた。

「……ほら、こーゆーときなんて言うんだっけ?」

小首を傾げて、散々覚え込まされたことのひとつである台詞を言わせようと問いかけてくる。その通りにわたしが答えたらきっと本当に、この話は終わるのだろう。本当にそれでいいのかなどと考える余裕は疾うになくて、この場をおさめる方向に舵を切ろうとしている予感がしていた。わたし自身が、そう決断しようとしている。それでいいと。

「……すき。……電気が、好き……っ」
「うん、俺も超好き」

首筋にそっと添えられた手に身体が揺れた。その震えは怖さからなのか、快感からなのかもはや判別がつかない。
ゆっくりゆっくり、律動が繰り返される。いつもしてるときのそれをなぞっていくみたいに。
初めてした時から電気は一刻も早くこうして形を馴染ませたいみたいで、入れたまま長いこと動かない時もあった。前に付き合った人とはどんな風にしたかを事細かに聞きながら。

「っはは、気持ちい〜……すげー締めてんじゃん」
「は、っ〜〜ちが、ん、……!」
「こんな気持ちいいのに別れるとかないよな? 」

わけのわからない理論で別れ話をなしにしようとする電気に反論する気はとうに失せていた。
首に添えていただけの手がぐっと喉を握るみたいに抑えつけてくる。片手とはいえ男の子の力で気道を押し潰されて、声もまともに出ない。脳の酸素が薄れないギリギリのところで踏みとどまりながら呻いた。
膣がそれに呼応するように収縮を繰り返し、結果として電気のものを強く食い締める。そのせいでじわじわと享楽がひろがってたまらない。もっとそうして欲しいって思うなんて、どうかしている。

「あ〜……スゲ、締まる……首絞めそんな気に入った?」
「そんな、ことっ……な、っは」
「……っ、え〜? 正直になろっ、な?」

声にならない声で否定の言葉を口にしても、中にいる電気の熱さが伝播するように身体が熱を上げていくのだ。ぐりぐりと子宮口を押上げていく亀頭がぶわりとひろがって、先程より打ち付ける動きが速度を上げる。
恍惚とした顔つきでわたしを見つめたまま、終わりが近いらしい電気が「どこに出そっか?」と問いかけた。

「……中でいいよな?」

問いかけた割にどこに出すかなんて答えは決まっていたらしく、確認でしかないそれを間髪入れずに電気は言った。

「んん、待っ……」

そう聞かれて初めて、なにもつけてないことを思い出した。このまま中に注ぎ込まれてしまえばもう本当に逃げられなくなる──と考えたこと自体に驚いた。わたし、逃げようとしてたんだ。おかしいな、「こんなに好きなのに」?
首元を抑えつける右手に、更に左手が増やされる。わたしの思考を妨害していくみたいに。

「抜いて、っ、ねえ」

それだけ口にしたつもりだったけれど声にならなかった。それをいいことになのか、本当に聞こえなかったのか、電気は口角を吊り上げて「なに? 聞こえねえ」と両手に力を込めた。視界が霞んで、瞼の裏になにかが弾けてゆく。
どうしてわたしはこんなに辞めて欲しがってるのかいよいよ解らなくなってきた。

「はあ……っ、イきそー……」
「あ、やめ……っ、抜い」
「……ンな急かすなって、っ」
「なか、出さない、っ……」

出さないで、と言い切るまでに中で性器がぶるりと大きく震えてみせ、どくどくと膣奥を白く染める。生々しい熱が勢いよく広がると、それを一滴も零すまいと一層きつく彼を吸いあげた。

「……へへっ、すげー出ちった」
「あ、っ……」

ぐっと子宮口へ押し付けるように腰を限界まで進められるのを、腰を震わせながら受け止める。
首を締めていた両腕はもうわたしの腰を抱いて、耳元に寄せられた唇が「愛してる」と囁いた。脳に直接流れ込む甘言に対する答えはきっと、ひとつしか許されない。

わたしが身勝手に切り出した「終わり」を、なかったことにして許してくれようとしている電気にそもそも、それ以外の言葉など言う必要がないのである。



20220602


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