※夢主自慰行為あり








「せっかく来てくれたのに悪いんだけど、ちょっぴお外出てくるね! 30分くらいで戻ってくるからここで待ってて〜」

本業であるデザイナーとしての納期やFling Posseのリーダーとしてのライブが最近あったりと忙しくしていた彼にようやく会える時間が出来たそうで、お家にお邪魔してみればこれ。ただ、その上で今日のメイクと服装を褒められてしまえば「まあ、30分くらいなら」と思えてしまうからちょろいものである。
忙しく尚且つ有名人な彼とのお付き合いというのはいろいろと大変だけど、お仕事に奔走するとっても彼はカッコいいのだ。ラップバトルで思いっきり高速ライムを刻むところだって、真剣にデザイン画を書く姿だって、全部。

事務所と同じで、カラフルな色使いでありながらセンスよく纏められている乱数くんらしい部屋でとりあえず先に寛がせて貰うことにした。
久し振りに会えるってことで気合い入れて身支度をするため、早起きしたせいもあって少し眠気もあった。メイク崩れても嫌だから流石に寝ないけど、少し休ませて貰おう。
こちらはコンセプトが他と違うのか、パステルカラーで纏められた寝室で、壁に沿って置かれた寝室のベッドへ座り、そのまま壁によりかかる。
すると、枕の上に乱雑に置かれた乱数くんの羽織物が目に入った。いつも着ているグリーンのそれではなく、恐らく部屋着の上から少し肌寒いときに使っているものだろう。
ほんの、つい、ほんの出来心だった。
わたしはそれを手にとって、そっと鼻先に近づけて、深く呼吸をした。

「……すぅ、は……っ」

誰よりもいちばん好きな人の、普段着ているもの。
汗や体臭、色々なものが染み付いているであろうそれ。本人は不在のこの状況。
片思い相手の体操服をこっそり借りる思春期の男の子のような気持ちでわたしは、乱数くんの匂いにひたる。
こんな状況を見られたら、引かれてしまう。分かっている。頭では分かっているのだけど、止められない。それに、今日久し振りに顔を見るということは、そういうこと。ずっと触れることが出来ていなかったという訳。そのせいか乱数くんの匂いだけで行為中を嫌でも連想してしまうし、下腹部を熱くしてしまうまでにそう時間はかからなかった。
本人が帰ってくるまでにすました顔で、何もありませんでした風を装っていなくてはならないというのに。それに、人の家で勝手にひとりで欲情して、なんてダメなのに。

「……ぁ、あっ」

でももう、止められなかった。大丈夫、すぐ終わる。根拠なくそう言い聞かせるように頭の中で悪魔が誘惑するまでもなく、わたしの指先は下着の中へ滑り込んでいた。

「んぅ、ふ……っく、ぁ」

いつも乱数くんがするみたいに、濡れた蕾を指先でぐにぐにと撫でる。目を閉じてもう片方の手で、鼻先に上着をぐっと押し当てると彼の匂いが強く感じられてより一層そこを濡らしていった。びりびりと痺れるみたいに熱くなっていく。
こんなところ、乱数くんに見られたら──そう思えば思うほど滑りが増していく。

「あっ……乱数く、すきぃ……!」
「ボクもなまえのこと、だぁーいすきだよっ」

思わぬところから独り言に対して返事が聞こえて、快楽とは違う意味で体がびくりと震えた。閉じていた目を見開き手にしていた上着から手を離すと、乱数くんが座り込んでわたしの足の間を覗き込むみたいにして、ベッドに頬杖をついていた。

「!!……えっ、嘘、い、いつから……」
「え? ずぅーっと見てたよ」

屈託なく笑うその顔はいつもと変わらない、可愛いかわいいわたしの恋人であった。でもその表情から、こんなところを見てしまってどう思ってるかなんて想像もつかなくて、怖くなってなんと、泣いたのである。

「……ぐす、ぅ……ひ」
「あぁもう泣かないでー、せっかく綺麗にメイクしてきてるのに」

腕を伸ばしてわたしの頭を撫でる手のひらは優しくて、より止まらなくなってしまう。人の家で大人しく待っていられなかった自分が悪いのに。

「……泣くなって」

ずし、とベッドが軋み、暗く影が落ちる。さっきまでと違う、低い声で乱数くんがわたしを見下ろして、腕をベッドの上に抑えつける。
え、とか声を上げた隙にわたしの腰に跨る乱数くんが、わたしの涙を舌で拭う。そこではた、と気づく。跨がられたことで下腹部にあたる、大きく腫れ上がったそれ。

「こうなってんの、どっちを見たからだと思う? なまえがボクの上着オカズにしてたのと、泣き顔と」

水色にピンクが混ざった、飴玉みたいな瞳にわたしが映っている。その問いかけに答えを用意することはできなかった。

「わかん、ない……」
「ふふ、正解はねぇ」

妖しく笑う顔が近づいて、唇を貪り尽くすみたいに舌が侵入してくる。さっきの上着からしたのと同じ匂いが、強く香った。さっきまでの色々、どうしようとか引かれちゃうとか思ってたのまで全部忘れるくらいに舌先だけで快感を与えられてもう、どうにかなりそうだ。乱数くんは、口の中まで甘いんだなってぼんやりと思った。

「両方だよ」

可愛らしく笑いながら言っているように見えるのに、その目は笑ってなかった。完全にその目は、思い上がりでも自惚れでもなくわたしへの欲情を現していた。いつもわたしを抱く時と同じか、それ以上に獣を宿したような顔に見つめらる。
乱数くんがデザインしたワンピースのボタンをひとつひとつ丁寧に外しながら、幾つもの箇所に口づけていく。

「ちゅ、もっと……」
「あは、チュー好き?」
「すき、乱数くんとちゅー、すき……」
「かーわいい」

満足そうに笑いながら、また唇が重なる。乱数くんの舌を受け入れながらいつの間にか身につけていたものは全て取り去られると、もうすっかり先程からずっとでろでろになっているそこに彼の手が触れる。

「ここ、いつからこうなの? 上着の匂い嗅いだ時?」
「や、ちが……っ」
「それとも、来た時からずっと?」

そんなわけないのに、意地悪く聞かれるのも、恥ずかしいけど嫌じゃなかった。器用にわたしのナカや外側をいじくり回しながら、乱数くんも合間に着ているものを脱ぐ。小柄な割に筋肉のついた体に、ぼんやりと見とれてしまう。この可愛らしい顔にこの身体は、ずるい。何度も惚れ直してしまう。
そうして意識があるかないかの中間くらいで、急に身体の中心を太く堅い杭が穿たれるみたいにして、乱数くんのものが入ってきた。

「っあ、はぁ……!」
「とろっとろだったからすーぐ入っちゃったね? なまえちゃんえっちー」

誂うみたいにけらけら笑いながら、ぐ、と更に奥を貫く。
既に心も身体もぐちゃぐちゃで、違う、ともそうだとも言うこともできない。もう乱数くんにはどこを突かれるのが、触られるのが好きかがよく知られてしまっている所為で、彼はどこも間違いなく確実にわたしの好きなところを攻め続ける。

「……っ、気持ちよさそー……かわいい」
「乱数く、すき、好きぃ……ぁあ、ぅ」
「ボクもなまえ、大好きっ……ぁは、っ」

喘ぐわたしの声の合間に、乱数くんの荒い吐息が聞こえる。ああ、乱数くんも気持ちいいんだって思うと余計にわたしの感度が上がっていくかのよう。
頭の中はもう真っ白で、彼の前で乱れるのが恥ずかしいとか、さっきのこととかとっくにどうでもよくなっていく。

「なまえ、気づいてる? ……っ、今ね、泣いた時とおんなじ顔してるの……っ、ぅ」
「んぇ……っ、あ、ぁっ、う……っは、あ!」
「すんごい、やらしー顔っ……!」

愛液でぐちゃぐちゃになって膨らんだクリトリスを指で摘まれながら、ナカを掻き出すみたいに出たり入ったりする乱数くんの太いもので打ち付けられて何度も気を遣りそうになる。
今言われたことだって恥ずかしいけど、その羞恥心すら快楽の渦に飲み込まれてしまう。ずちゅずちゅ、と下品な音で耳まで支配されるようで、もう、もう無理。

「やだやだ、っ、無理……! イッちゃ、あっ」
「いいよ、好きなだけ……イきなよ、っ……」

びくびく、腰を震わせると呼応するみたいに頭の隅がちかちかして、目の焦点も合わなくて、なのに乱数くんは動き続けるからずっと気持ちよすぎて、もうこれ、死んじゃう。

「中すっごい……動いてる、っく、……!」
「だめ、とまって、っ……イった、ばっか……っああ、んう」
「止まっちゃって、いーの? 気持ちいいの、好き、でしょ……?」

好き、って答えたいのに、唇を動かしても声がでなくて、いや出るけど喘ぎ声にしかならない。

「ボクも、イっていい? なまえのナカ、キツすぎて……っ、もう」
「イって……っ、イこっ、も、しんじゃう……っ」
「ぁは、死んじゃだーめっ」

そんなのボク泣いちゃう、って言いながらまたわたしの唇にむしゃぶりついて、舌を絡ませ合う。酸欠になりそうで、息もできなくって、なのにまた飛んじゃいそう。苦しいのに、その苦しささえすごく良くて。
ぱちゅん、と最後に強く打ち付けられたときに中で乱数くんの先端が弾けて生温い液体が流れ込むのを感じた。それと同時にわたしもさっきより深く達してしまった。

「ぁ、は……はぅ……」
「……っ、あ……なまえ、またイっちゃったんだね……っ」
「だって、っ……ぁ」

肩で息をし、呼吸を整える。愛おしそうに目を細める乱数くんを見つめ返し、わたしから手を握った。

「それ、良かったらあげるよ」
「……ん……いいの?」

乱数くんは、ベッドの隅に置かれた上着を指して言った。嬉しいけど、貰ってしまったらそれはそれで懸念事項がひとつ。

「そのうち匂いは消えちゃうけど……」
「そしたらまた、違うのあげるっ」

魅力的な申し出にわたしは頬を緩ませた。

「あげた上着でナニしたのか、実演して貰うけどねっ」

そのあと小声でそう付け足された交換条件は、聞かなかったことにしたい。



20190909


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