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 聖はコーンスープの缶を口につけたまま上向いた。こつこつと底を叩いてコーンの粒を出そうとする。が、なかなか出てこない。魔力を使えば一発で出せるが、あと一歩で出てこないのが彼に魔力を使うのを躊躇させる。人間で言うならばリモコンを探すのが面倒でテレビをつけないのに似た感覚だ。
「なにしてんだ?」
 そこへ圭助が来た。大口を開けて缶を叩く聖を不審げに見ている。コーンスープを缶で飲んだことがない圭助にはその姿が不思議に見えたようだ。
「粒が出てこねェ」
 答えながら聖が缶を振る。
「貸せよ」
 しばらく見ていて焦れったくなったのか、圭助が上下に動く手から缶を奪った。
 そのままキッチンに入り、流しまで行くと、あろうことか缶の口を蛇口に添えた。どばどばと入れられていく水に、聖は言葉を失う。
 圭助は缶の口を親指で塞いでよく振ると、空き缶を洗う要領で逆さにした。濁った水と共に出てきたコーンを確認して、ふうと満足げに息をつきながら持ち主に空き缶を返す。
「ほら」
 一見真顔だがどこか得意気な顔をしている。
「ほらじゃねーーよ」
 聖が無表情でその顔をビンタした。

2015/01/08

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