ずうっとずうっとむかし
お父さんが死んだばかり
私がまだ小学生だった頃



もしかしたら、また父に会えるんじゃないか
ある日突然いつものように姿を現すんじゃないか

…なんて、夢見ていた時代もあった。

父の遺体を目にしていない分、尚更





最後に会った日のことは、よく覚えている。
海外への出張だと聞いていたあの朝は
「いってらっしゃい」

が言えなくて、むすっとした顔付きのまま横目で見送ってしまった。
そんな私を父は淋しそうな…申し訳なさそうな顔で見詰め、
「行ってきます」
という言葉を残して私の世界から消えた。

日常と言い切れる普段通りの光景。
照れ屋な気性の私は素直に言葉が出せなくて、いつもそう。

あの日が最期だと分かっていれば、だなんて後悔の文句はありきたりだけれど、私の心は確かにそう悔いていて
何度あの日に戻りたいと願ったことか数えようはない。


叶うことなら、あの朝をやり直したい
こんな性分に生まれた自分が憎い
もう同じ過ちは繰り返さないから、だから、

お願いだからもう一度、もう一度だけ父に会わせて神様お願い

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