目が覚めると部屋にアンジールは居なかった。
(ま、まさか………遅刻!?)
慣れない世界で寝過ごしたかと思って飛び起きる。
リビングに行くと珈琲を片手に携帯をいじっているアンジールが居た。
「早いな。おはよう」
「い、いえ………部屋にいなかったんで遅刻かと思って飛び起きました」
「ああ、それは悪いことをした。
朝食要るか?」
「わぁ!ありがとうございます!いただきます」
そう言うとパンと珈琲、目玉焼きとフルーツという立派な朝食が出てきた。
このバリエーション………なかなか自分では用意出来ない。
「携帯で何してるんですか?」
「神羅から色々メールで配信されるんだ。あとは個人的な内容とか………」
「へぇ〜。私もメールしたい………」
パッと顔を上げたかと思ったらため息をつかれた。
きっと今後もため息ばかりだろう。
「遊んでいるわけじゃない」
「知ってます。でも私もアンジールとザックスとメールしたいです!」
目を輝かせて訴えれば、またため息をつかれる。
運よく会社から支給してくれないかなーと思った。
「ラザード統括に頼め」
「!」
どうやって会うのかわからないけど、きっとアンジールにくっついていれば会えるだろう。
喜びに浸っていると頭を小突かれた。早く食えと言われる。
私は急いで美味しく朝食をいただいた。
「それから今日からこれを着ろ」
「ソルジャー服………と、これは?」
「プロテクターみたいなものだ。女性ソルジャーがいないからどれがいいかわからなかったが………とりあえずそれも着ておけ」
「わからなかったって………アンジールが選んでくれたんですか?」
「一応な。俺の訓練は厳しいぞ」
とても嬉しかったが、訓練で死んだりしないよね………と本気で思う。
でもできるだけアンジールの技、戦い方を吸収しようと決めた。きっと今後必要になる。必ず。
神羅ビル49階ソルジャーフロア
「今日の訓練は午前まで。午後は任務がある。
内容は簡単な討伐………といっても1stの中で簡単なものだ。ツカサも来い」
「え〜!俺は〜?」
「頑張って励めよ」
1stと2ndを連れて行く討伐なら私なんて足手纏いもいいところだ。
きっと1stが1人でも十分にこなせる仕事なのだろう。
「ツカサ、安心して行ってこいよ。何かあってもアンジールなら必ず助けてくれる」
「うん、わかってる!実戦で勉強してくるね」
午前の初訓練はウォーミングアップのスクワットとマテリアについての勉強。簡単なマテリアなら問題なく扱える気がしたが、少しスクワットが辛かった。
午後。
準備が出来次第、ブリーフィングルームに集合との伝達がされる。その前に支給ポットを確認しなければならない。
「初支給ポット!何かな〜?」
プシュー、ガコンッ………
“ぬすむ”
「………………」
思わずポットを叩いた。きっとバグなんだと思う。
よりによって“ぬすむ”とか有り得ない。殆ど戦わないにしても、これから1stの任務に行くのに“ぬすむ”なんて不運すぎる。
ケアルガとかファイガとか色々あるだろうに“ぬすむ”チョイスをした会社を心底疑った。
「ケアルは持ってるからいいか………時間ないから行こ」
使わないかもしれないマテリアをとりあえず装備してブリーフィングルームに入った。
「ツカサ………ここガラス張りだから、お前が頭かかえてるのもポット叩いたのも見えてるぞ」
椅子に座っていたアンジールは何だか笑いを堪えながら私にそう言った。見られていたんたと思うと恥ずかしい。
「お前がアンジールの専属ソルジャーか」
向かいの席からそう声をかけられて目線を移すと、有り得ない人がいた。
驚きすぎて言葉が出てこない。
「紹介しよう。ソルジャー1stのセフィロスだ」
「あ、よろしくお願いします!アンジールの専属ソルジャーのツカサです」
「昨日連絡したら一度会いたいって言うからな。珍しいことだ」
「手ぶらで来たわけではないからいいだろう。これも持ってきた」
ポンッと手渡された箱を開けると中から黒い携帯が出てきた。
「これって………」
「必要なデータは入れてある。あとは好きにしろ」
そう言われて見てみると、アンジールの番号もセフィロスの番号も入っていた。
「こんなに早く携帯が手に入るとは………!
ありがとうございます。ラザード統括にもよろしくお伝えください」
「それは俺からだ。あいつじゃない」
「え、何で………」
「ただの気紛れだ。
それより任務に行くのだろう?行くぞ」
「1stが2人の任務って大変なやつじゃ………!!」
「俺は今日オフだ。行くだけで手は出さない」
よくわからないが、携帯はセフィロスからのプレゼントで任務にはどうやらついてくるらしい。
私たち3人は任務の場所であるジュノンに向かった。
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