気紛れ子猫




どこまでも続く青い空。

彼の瞳と同じ青。

私、この青が好きだった。





今までの旅で数えきれない程たくさん、たくさん、この世界の景色を目に焼き付けてきた。

地球にはない景色。

生物。

音や匂い。

料理やアイテムの味。


全てが初めてだった。

1番思い出すことが多いのは、ミッドガル。
彼と出会った場所。
あの空の見えない閉鎖的な場所なのに愛しく思える。

自分にとっては大切な場所だけれど、彼にしたらどうなのだろう。
長年いた場所だから出会いなんて、もしかしたら事件の1つくらいにしか思ってないかもしれない。

ありえるな〜と思ったら笑みが溢れてきた。


「ツカサ」

「………アンジール?」

「今戻った。
外なんか眺めてどうした?ミッドガルの眺めなんて、そんなにいいものじゃないだろう」


確かにこんな無機質な物が入り交じる緑の無い気色、きっと普通は眺めようと思わない。


「ねぇ、初めて会った時のこと覚えてる?」

「初めて………?ああ、ザックスの訓練中だったな」

「お、覚えてるんだ。さすがですね、アンジールさん!」


おちゃらけたように言えば、額に手を当てていつものため息をつく。


「………それで?それがどうしたんだ」

「ううん。別に意味はないの。ただ、私この世界好きだなって思っただけ。
アンジールにとっては迷惑なだけだったんだろうけど、私にとっては幸運なことだったわ」


また視線を外に向ければ、相変わらず神羅ビルは眩しいほどに光を放っていた。


「話せないこと多いけど、私………神羅カンパニーのじゃなくて、アンジールとザックスの味方でいたいの」

「そうか」

「心強いでしょ?」

「そうだな」

「あんまり嬉しそうじゃないね」

「喜ばれたかったらまずは2ndの任務が1人でできるくらいまで成長することだ」


アンジール直属部下ということもあり、1人で任務に行くことはまずなかった。
それ故に守られることも多々あったのも事実。


「そんなのすぐですよーっだ。
そのうち私無しじゃダメって泣かせてやりますとも」

「フッ………頑張れよ、子猫」


アンジールはたまに私を子猫と呼ぶ。
もちろん外では誰が聞いているかわからないし立場もあるから呼ばないけれど、最初はバカにされてるんだって思ってたこの呼び方も愛着が湧いてくる。


ソファーに腰掛けるアンジールの膝の上に、恥ずかしがることもなく私は横向きで座った。


「………おい」

「なに?」

「お前は上司の上に座るのか」

「ただでお尻の感触味わえてるんだからいいじゃない」


そしてため息。
もうそのため息にも慣れてしまった。困らせるの、好きなのかも。


「俺も男なんだが?」

「なに、欲情してるの?」

「いや、そうじゃなくて………」








チュッ








軽いリップ音を鳴らして彼の頬にキス。
そしてすぐにヒラリと膝から下りた。


「じゃ、これからザックスと手合わせの約束してるの。
夕飯までには帰ってくるからよろしく」

「お、おい!お前というやつは………」


少しズルいかなって思ったけど、アンジールの困り顔はやっぱり好き。



次はどうやって困らせてやろう………ってそんなことばかり考えている私は、どうしようもなく気紛れ子猫。







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気紛れ子猫。

2人っきりだと落ち着きすぎて子猫感ないですね。笑

アンジールは堅物だから夢主の自由さに困りつつ、世話焼きだからそれに付き合っちゃう優しさ。
ザックスとは違った意味での自由さにタジタジ………みたいな。



マジたまらん。



長編の中でまだ敬語なのに口調が違うのはご愛敬ってことで!










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