安心




今日は1日を使って自由行動になった。
クラウドが別荘を持つコスタ・デル・ソルはとても栄えていて、観光するにも住むにもとても素晴らしい。

ティファとエアリスはアイテムの買い出し。その荷物持ちでバレット。
ユフィは新しく手に入れたマテリアを試したい!とレッドXVを連れて街を出ていった。ヴィンセントは2人じゃ心配だから………とついていった。
シドとケット・シーは宿屋のビリヤードと、そのまま酒場に行くらしい。


(私はどうしようかな………
そういえばクラウドはどこにいるんだろ)


各々が自由行動をしている中自分だけボ〜っと別荘にいては勿体ないと思い、唯一予定を把握していない彼を探すことにした。




部屋を出て外に向かおうとすると、シャワーの音が微かに聞こえてくる。
みんなが帰ってくるにはあまりにも早い。
朝ユフィがシャワーを使っていたから、もしかしたら水を閉め忘れたのかも………と一応ノックをしてから入った。


「誰かいまーすかー?水の閉め忘れでーすかー?」


どうせ誰も聞いていないだろうし………と何も考えず緩〜く入ってしまったことに今更後悔した。



「 ツカサ? 」


青い瞳と目が合う。
見慣れたツンツンの金髪は水を含んでペタンとしている。キラキラした水滴が毛先から滴り落ちていた。
いつもと違う無防備な表情に心臓がドキッとする。


「えっ、あ!いや、いやいやいやいや!!覗こうとしたんじゃなくて!………えーっと、そう!水!朝ユフィが使ってたから水の閉め忘れなのかと思っちゃって!!」


失礼しました!!と勢いよく扉を閉める。
言い訳したいわけではないが、苦し紛れの言葉がより怪しい言い訳のようになってしまった。


(やってしまった………)


上から下まで全て見たわけではないが、何だか恥ずかしくなって部屋へ駆け込んだ。
そのままベッドに倒れ込み、皆が帰ってくるまで………いっそのこと明日まで彼と顔を合わせないようにと祈った。








キィ………バタンッ







「入るぞ」

「………もう入ってるじゃない」


こんな短時間で眠れるわけなどなかった。
顔を枕に埋めながら、先程の恥ずかしさをなるべく感じられないように心を落ち着ける努力をする。
寧ろからかわれる前に謝るだけ謝っておこうと顔を上げた。


「………………」


彼はズボンは着用していたが、首からタオルをかけて上半身裸。
その光景に頭がついていかず、もう1度枕に顔を埋める。


「さっき様子が変だったが大丈夫か?」


心配そうにベッド脇の椅子に座った彼との距離にまたドキドキする。


「クラウドって男の人だったんだね」

「お前は俺を何だと思ってるんだ」


頭をクシャッと撫でた逞しい腕を眺め、ついつい手が延びてしまう。


「クラウドって腕は格好いいよね」

「それ褒めてないだろ」

「褒めてるよ〜。もうね、抱きしめられたいくらい!」


誤魔化すように、なーんてね!と笑いながら言ったら腕を引かれ、そのまま鍛え上げられた彼の胸の中に収まってしまった。
驚いて顔を上げればまた青い瞳と目が合う。


「クラウド!は、裸!!破廉恥!」

「さっきから変なのはこれのせいか。ツカサは興奮し過ぎだ」


くっくっくっ………と笑いを我慢している彼に触ってみるか?と手をとられ、綺麗に割れている腹筋に触れる。


「もっと、だろ?」


手を後頭部に添えられて彼の顔が段々と近付いてくる。
思わず目をつぶる。
頬に柔らかい感触。


「可愛いな、ツカサは」

(からかわれた………!!)


それじゃあおやすみ、と今度は同じベッドに横になる。邪魔にならないようにベッドから降りようとすれば腰に腕が絡み付いた。


「おいで、抱き枕」


陽の光が綺麗な金髪に当たって、優しい笑顔を更に引き立てた。
身を捩って逃げようと試みたが、どうやらこの腕は本当に自分を抱き枕にするつもりらしい。
ふわっとシャンプーの香りが鼻を掠めた。
凄く落ち着くいつもの彼の香りに段々と眠くなる。


(きっと安心ってこういうことなんだな)


皆が帰ってくるまでに起きればいいやと諦めて、大人しく抱き枕になることにする。



彼の香りに包まれながら。















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