大きさ、とか
「 レノ 」
突然彼女が呼ぶ。
どうかしたのかと振り向けば彼女は手元の本を読んでいて視線が合わなかった。
「ねぇ、私のことどれくらい好き?」
なかなか難しい質問だと思ったが、何か彼女を不安にさせるようなことをしてしまったのではないか………と考えた。
「ものすごくだぞ、と」
「ものすごくってどれくらい?」
仕事と私、どっちが大事なの!?………なんて言うタイプではないと思っていただけに驚いた。
「ツカサが思ってる以上にだぞ、と」
「ざっくりしすぎてよくわかんない」
プイッと拗ねたようにまた手元の本に視線を落とす。
遠目でしかわからないがどうやらあの本は漫画のように見える。
(もしかして………)
レノは気付かれないように彼女の後ろへ回り、その本を覗いた。
少女漫画のような感じであったが、途中から見てもわかるくらいに物語のピークであった。
恐らく漫画を真似してそんなことを言ったのだろう。
「なるほどな、と。その物語の男はなんて答えたんだ?」
彼女は後ろからの声に一瞬ビクッとしたが、まるで気付いてました〜と恥ずかしさを隠してまた手元の本に視線を戻した。
「………何も言わずに彼女を抱き締めたの。ちょっとキザだけどロマンチックだよね」
これができる人は相当自信があるんだね、と笑いながら立ち上がった彼女をレノは後ろから抱き締めた。
首にかかる息がくすぐったい!と身を捩って腕の中から抜け出そうとしていた。
「愛してる」
離さないというように腕にグッと力を込めて包み込んで囁けば、腕の中でピタリと大人しくなった。
「そっ………それは、ズルいよ」
顔を赤らめて俯く彼女がこんなにも愛しく、好きだなんて言葉じゃ足りない。
ああ、やっぱりツカサじゃなきゃダメなんだと改めて思った。
「うちのお姫様はこんなんじゃ足りないんだな、と」
いたずらっ子のような笑顔を向けて、そのまま彼女の頬にキスをする。
「わ、わかった!もうわかったから!!レノの愛情はもう十分わかった!」
さっきよりも顔を真っ赤にして、コーヒー入れてくる!と走り去った後ろ姿をレノはずっと眺めていた。
いつもみたいに「バカじゃないの」と言われるだろうと思っていたのに、顔を真っ赤にするなんてなかなか珍しいものを見たな〜とにやけ顔が止まらない。
(次はどこまでちょっかい出してやろうかな、と………)