明日にはない今日という日 05




陽が沈んだ頃、少しずつとチョコボの森に人の気配が感じられた。
みんなに「知り合いがいたら声を掛けて欲しい」と頼んだかいもあって思っていた以上に人が多い。
シド大公、タンタラスのみんな、パックとラニ。黒魔道士のみんなに、ドワーフたち………


(すごい、ベアトリクスもいる!忙しいだろうに………)


こんなにもたくさんの人々が私たちの旅に関わってくれたのかと思うと泣きそうになる。
しみじみと感動している間に空は真っ暗になり、星がよく見えるようになってきた。
暗がりの中身動きもとれず、次第にみんなが「何が始まるの?」とざわつき始める。

そろそろ始めよう。
感謝を込めて、最高のエンターテインメントを。


「急なことにも関わらず集まってくださった皆さん、ありがとうございます。
知っている方もいると思いますが、今日は私がみんなと出会った最初の日でした」

「「「 おめでとー!! 」」」


わぁ!と歓声が上がり、温かく見守ってもらえていることが肌でも感じることが出来て鳥肌が立つ。
色んな感情が渦巻いて、全部引っくるめてワクワクしている。


「今日は一緒に旅をするメンバーから幸せを頂きました!
私のために色々考えてくれて、サプライズをしてくれて………一生忘れることはないと思います。
だから、私も感謝の気持ちを送ろうと思います」


パチンッと指をならして合図をすると、森の中は灯りでいっぱいになった。
暗闇で隠していた森の中は今夜だけ美しい花畑になる。


「すごいわ、ツカサ!こんなにもたくさんのお花を見るの、エーコは初めてよ!」

「この美しさはクレイラにも似ておる」

「綺麗っスね、アニキ」

「そうだな」


ヒューヒューと指笛を鳴らす人や、美しさにただ見惚れる人………みんなが同じ景色を見ているということに何だか嬉しくなった。
心の中で祈るとイフリートとラムウが夜空を花火で彩り、その花火を合図にシヴァとリヴァイアサンは氷で噴水を作って心地いい水の音を奏でてくれた。


「私はこの世界が好きです!
色んな種族が共存し、見た目よりも中身でその人のことを見ている………皆さんの強さと優しさに溢れていました」


私が話始めるとみんなは頷きながら静かに話を聞き、時折歓声や拍手が聞こえた。
きっとみんなも同じことを感じているだろう。


「皆さんが知っての通り、私は今ジタンたちと旅をしています。
ジタンたちの旅は最初から困難が多かった。それはきっとこれからも変わらないと思います。
だからこそ世界のために戦う彼らを、これからも変わらず助けて欲しい!」

「当たり前だろ!」
「そうだずら!」
「みんな元よりそのつもりだからな!!」

「ありがとう!こんなにも心強い仲間がいるなら彼らの旅はきっと大丈夫です。
最後に、皆さんの幸福を願って私から祝福の祈りを送りたいと思います!」


パチンッと指を鳴らすと空からキラキラと輝く光が降り注ぐ。お祭りのような空間にみんなワクワクしていた。


「綺麗だね、この世界も人々のココロも」


そう呟くとフワッと肩に降りてきたカーバンクルが優しく頬を擦り寄せてきた。








サプライズも本当にお開きになったところでようやくホッとできた気がする。
宿へ戻る前に星を出来るだけ近く眺めたかった私は、森の中でも1番高いところへ向かった。


「ツカサ、お疲れさん!」

「あ、ジタン」

「みんな驚いてたぜ?」

「狙い通りよ。私だってサプライズされると思わなかったんだから」

「はははっ!俺たちもまさか逆サプライズをされるとは思わなかったさ!」


隣に立ったジタンは空を見上げて私と同じ景色を眺める。「実は今日ダガーがな〜」「あの時ビビなんて〜」と他愛もないことをしばらく2人で話した。
そろそろ寒くなる前に帰ろうと声をかけると、彼は笑って私の手を握る。


「実はまだ終わりじゃないんだ」

「?」

「俺からツカサへプレゼント。最後に渡したいって思ったのさ」


そう言って手渡された袋の中を見ると、真新しい革のにおいがする武器ホルダーだった。
初めて貰うのに見慣れているような気がしてしまうのは何故だろう。


「お、気付いたか?それは俺のと同じ物なんだ」

「本革でしょ、これ。こんな高い物………」

「実は特注で作ってもらったから使い勝手がすごくいいんだぜ!」

「しかもオーダーメイド!?」


ずば抜けて高そうなプレゼントに戸惑ったが、よく見ると宝石のような石が綺麗に装飾されている。これは?と訊くと、彼は恥ずかしそうに答えてくれた。


「ツカサも短剣を使うからと思ってこれを選んだんだ。
でもいくら真新しくても、使い込んでいったらその内俺のとどっちかわからなくなるかもしれないだろ?」

「そっか!装飾して一目でわかるようにしてくれたんだね。
この装飾すごく綺麗で可愛いから使うのもったいないなあ。革製品作る人ってこんな手の込んだ装飾までしてくれるの?」

「あ、いや、それは………」

「おぬしが付けたと正直に言ったらどうじゃ?」

「あら、フライヤ。よくこんなところまで上がって来れたね」

「ジャンプは得意なんじゃ」


外が冷えてきたからわざわざ呼びに来てくれたらしい。すぐ戻ることを伝えるとフライヤは再び大きなジャンプで戻っていった。
予想外にばらされたジタンの顔が少し赤くて笑ってしまった。


「ありがとう、ジタン」

「気に入ってくれたならよかった」

「ううん、それだけじゃない。今までずっと助けてくれてありがとう。
私の旅はジタンと出会った時から始まった。足手まといにならないようにするから最後まで一緒に行きたい」

「俺だってツカサには助けられてばかりだったさ!
足手まといなんかじゃない。最後までツカサを守らせてほしい」

「うん。これからもよろしく、ジタン!」






いつか来る別れが悲しくないわけじゃない。

大事なものを失うことが怖くないわけじゃない。


前を向いて生きられなくなる方が何倍も嫌だって気付いた。


だから私は“明日にはない今日という日”をこれからも全力で生きていきたい。





■ Thank You!anniversary! ■






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結局、1〜3rd anniversaryとなってしまいました。
お付き合い頂きありがとうございました!
これからもよろしくお願い致します\(^o^)/








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