明日にはない今日という日 04




「………で、あの時は………から………」

「森がお花でいっぱいになったクポー!………ツカサ何してるクポ?」

「あ、メネ。手伝ってくれてありがとう。
今ね、演出も考えながら全体の確認をしているの」

「1人でお芝居するクポ?」


私の言葉にピンとこなかったようで、隣に座ったメネとチョコが台本を覗き込む。
自分には読めない文字だったのだろう。少し顔をしかめてこちらを見た。


「ふふふっ。読めないよね、この字」


空白に“メネ”と“チョコ”を片仮名で書いてあげる。
初めての文字に興味を持った2人がキラキラした眼差しでペンの動きを目で追う姿が可愛らしい。


「これが“メネ”でこっちが“チョコ”って読むの」

「クェッ!」

「すごいクポ〜!!
じゃあ、これは何て書いてあるクポ?」


既に書いてあった1文を指しているようだが、それは台本の一部。教えることはできない。


「んー、あとのお楽しみかな!」

「気になるクポ〜」
「クェェ………」


これはエンターテインメント。私からみんなへ捧げる最大限の舞台。
お芝居ではない。台本と少し違っても“私の言葉”で伝えられる。だからこそ今日は意味がある。


「みんなを呼びに行こう!逆ドッキリの始まりよ!!」








急いでリンドブルムに戻ると、大きな人物がこちらへ向かってくる。


「あ、サラマンダー!丁度いいところに。
今みんなを探してるんだけど、どこにいるか知ってる?」

「ああ」

「みんなで行きたいところがあるんだけど………え、ちょっと!なに!?」


話し終わる前に目隠しをされる。そしてお姫様だっこ………なわけがなく、俵担ぎで私は連れ去られた。


「ぎゃーーー!!!人さらいーーーー!!!!」

「………やめろ」

「だって目隠しに俵担ぎだなんて、間違いなく誘拐じゃない!」


ギャアギャアと騒げば徐々に風が強く当たる。
担ぎ方や走り方………とにかく全てが雑で、走る振動が直にお腹にきてつらい。


「ぐぇっ………もー!どこいくのよサラマンダー!」

「着いたぞ」


ドサッと下ろされた先にはお城の大きな扉。
開けろと言わんばかりの視線に負けて、私は無言で扉に手を伸ばした。


「「おめでとう、ツカサ!」」


たくさんのクラッカーが鳴る音と拍手に圧倒されて声が出ない。
みんなが私に手を振っている。声をかけてくれる。


「料理がおいしいから食べるアル。ワタシ作ったよ」

「あら、エーコのスープも絶品なんだから!」

「僕も手伝ったんだよ」

「ツカサ、これは代々ブルメシアに伝わるお守りじゃ」

「新しい武器だ。
………他に思いつかなかった。文句は言うなよ」

「ツカサ殿!お役に立てればと思い、こちらをプレゼントさせていただきますぞ!」

「私も迷ったんだけれど………ツカサにピッタリだと思って、ビビとエーコにも手伝ってもらったの」

「みんな………」


少しポカンとしてしまった私に、トントンッと肩を叩かれて振り向けばジタンが笑顔でこちらを見ていた。
もしかして!と言おうとすると、彼はそうだよと頷く。


「覚えてるか?今日が“始まりの日”なんだ」


今日という日が私だけではなく、みんなにとっても大切な日だと思うと心が温かくなるのを感じた。


(きっと幸せってこういうことなんだね)


この時間を大切に思いながら、みんなと楽しくお話ししたり食事を楽しんだ。
私のサプライズはどこで切り出そうかとそわそわしていると、お開きの掛け声が聞こえる。


「ツカサ、今日は1人ぼっちにしてごめんなさい。
でもエーコたちこの日のために一生懸命考えたの!だからこれからも一緒に………」

「ちょっと待った!!」


本当にこのままお開きになってしまいそうで、つい割って入ってしまった。
まだ終わりじゃない。
まだ終われない。
だって私の気持ちをみんなに伝えていない。


「あのね、みんなにチョコボの森まで来てほしい」

「チョコボの森?」

「そう。みんなに見て欲しいものがあるから、一旦解散して夜になったら全員集合〜ってことでよろしくね」


夜まではまだ少し時間がある。
準備することはもうほとんど無い。あとは私次第。

疑問符を浮かべているみんなに挨拶をしてその場を離れた。


(最後の締め括りとして、最高の1日にしないとね!)







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みんなからのプレゼントはご想像にお任せします。







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