上司と部下




「私が好きって言ったらどうする?」

「………興味ない」

「でも告白されたら相手に興味湧くでしょ?」

「興味ない」

「今まであまり気にしてなかったけどどんな子かなーとか、どうして好きにな………」

「何が言いたい」


少しくらい言葉に詰まってみたりしないかなーなんて思ったのに、この上司は私をチラ見しただけ。
そして何事もなかったかのように手元の地図に視線を戻した。


「………っ何よ何よ何よ!!!
そんなんだからアンジールは疑われるのよ!」

「疑われるって何の話だ!!」


バァーン!とテーブルを叩き、思わず立ち上がる。
本当は周りから疑われてなどいないのだが、こうも相手にしてくれないのは気にくわない。
何よりどんなことより、部下は大事にすべきだと思う。


「どうせ、私のこと小娘だと思ってるんでしょ!
残念でした〜!
知らないと思うから言うけど、これでも私は24なんだからね!」

「………24だと?」


初めて聞いたぞと言わんばかりの視線を向けられる。
だって今まで訊かれなかった。だから言っていない。
ここでまさかのカミングアウト!をすれば、なかなか表情を動かさない彼の驚く顔くらい見られると思ったのだ。まあ、カミングアウトっていうか隠してはないのだけれど。
それでもどういう反応をするのか、少し胸がドキドキする。


「どう?私が大人の女だってことわかった?それなら少しは興味が湧く………」


大きなため息をついた彼はテーブルに突っ伏した。
どうしたのだろう。全てのリアクションが私の予想と違う。


(あ、あれ?どうしよう。表情読めない………)


童顔なのか?とバカにされるのだろうと思っていたのに、ため息以外何も反応がない。
不安になった私は彼の肩をチョイチョイッと指でつつく。するとつついていた手を掴まれた。


「ねえ、ちょっと………そこまで予想外じゃないでしょう?」


今度はこちらが小さくため息をつく。
確かに日本人は童顔だけれど、自分の顔はそこまでではないと思っていたのに内心少し傷付く。


(よっぽど子供に見えたのかしら)


「………ま……の……れ………は………たん………」

「え、なに?聞こえないんだけど?」


突っ伏したまま何かを呟いたようだが、全く聞こえない。
聞き返すと掴まれていた手に少し力が入る。


「今までの俺の苦労は何だったんだ、と言ったんだ」

「??」


苦労の意味がわからなくて疑問符しか出てこない。
くろう………
クロウ………
苦労………………?
アンジールが苦労するといえば………と関連付けて頭を回転させると、ピン!とくるものが1つだけ思い付いた。


「え、まさか年齢わかったからもっと厳しく訓練してもよかったんじゃないかってこと!?
やめてよそういうの!こっちはもういっぱいいっぱいだわ!!」

「違う。訓練は他の誰よりも厳しくハードにしている」

「え、えっ?うそ。それもそれで嫌なんだけど」


ヒドイ!と肩を押すと、お互いの視線が合わさって逸らすに逸らせなくなる。
彼の言いたいことが瞳から読み取れなくて更に緊張で胸がドキドキした。


「どうしたの、アンジール………」

「ツカサ」

「はい」

「好きだとか軽々しく言うのはやめろ」

「なぜ?」


そう訊くと私の手を掴んでいた彼の手が離れる。
かと思えば、今度は手を絡ませるように手と手のひらを合わせてきた。


「襲われても文句は言えないぞ」

「手を出してから言いなさいよ」

「それでは遅いだろう」

「なに?もしかして手も出したことないの?」


挑発をしてみるが全く表情が動かない。
わざとらしい誘いにも乗らないなんて、本当につまらない。


「部下の希望に応えてやりたいとは思う」

「?」

「責任は取ってやる」

「責任ってーーー」


全て言い終わる前に腕を引っ張られて彼の胸へドンッとぶつかる。
謝ろうと上を向けば彼の手が私の後頭部へまわされて、更にぐっと引き寄せられた。


「わっ!あ、アンジール!?」

「好きになってはいけないと思っていた」

「え?」


ギュッと背中に回された腕に力がこもり、少し息がしづらい。
こんなに大きな人が小さく見えて、私もその背に腕を回した。


「ツカサ、好きだ」

「もう………どれだけ待ったと思ってるの?こんなにも待たせた罪は重いわよ」


笑いながらそんな冗談を言うと、彼はムッとして私を横抱きにして歩き出した。
軽々と持ち上げた逞しい腕に感心しながらもどこへ行くのかと前を見れば、寝室の大きなベッドが視界に入る。


「ね、ねえ、アンジール?さっきのは冗談だから安心して」

「ああ。大丈夫だ」

「どこがよ!」


軽々とベッドに投げられた私は盛大にボフッと転がった。
反論をしようと起き上がろうとすれば、がっちり腕をホールドされる。彼の目は上司ではなく、男の目をしていた。


「責任は取る」


真面目な人をからかうのはもうやめようと思ったり思わなかったり………







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この続きをR18で読みたいので誰か書いてくれませんか!切実に!!(他力本願)







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