金色に輝く夢の出会い




「ほんとーにここなのか?」

「いや……多分また間違えてる」

 ウォードとキロスを振り返り、俺は得意気な顔を見せる。

「ここだっつ〜の!今回は間違いねえぜ!ほら!地図ど〜り!!」

「……ラグナくん。その地図は……前回のものだが?」

「あ?……ああっ!ど〜りで見たことあると思ったぜ!」

 ウォードの呆れ果てた目線と、キロスの可哀想なものを見るような目線が俺に刺さる。

「わりぃ!現場わかんねえ」

 俺の言葉に深いため息をつく二人。

「ついでに言うと、ここがどこかもわかんねえ」

「……任務より、帰る道を探したほうが良さげだな」

 キロスが言ってウォードが頷く。二人とも、なんか悟りを開いたような表情に見えるのは気のせいか?

「とりあえず、さっきの街に戻ろうぜ」

「ラグナくん。そっちは奥へ進む道だ。さっきの街に戻るならこっちだが」

 キロスの声に一歩踏み出した足を、引き戻して俺は方向転換する。

(絶対こっちだと思ったのによ〜)

 その時、視界の端に映った金色の光に俺は「あっ!」と声をあげる。

「何事だ?」

「あっち!なんか光ってんぞ?街かもしんねえ!行ってみよ〜ぜ」

 怪訝な顔をする二人に、ついて来いと身振りで示して駆け出す。

「あっ!おい!ラグナ!」

「ちょっと待て!」

 後ろから二人の叫ぶ声が聞こえたと同時に、ぐにゃりと歪む視界。遠くなっていくキロスとウォードの声。そして、激しく歪んでぼやけた景色。

(あ?何なんだ!?ど〜なってんだ!?)


 世界が反転したかのように、周りのぼやけた景色がだんだんくっきりとしていく。

 そして自分の目に映る景色に俺は、目を見開いた。

「な……っんだよ、ここ!」

 さっきまで森の中にいたはずなのに、どういうことだ!?

「キロス!?ウォード!?」

 後ろを振り返って見ても、キロスとウォードの姿は無い。その代わりに目に映るのは、絵本のような綺麗な街並み。

(ど〜なってんだよ……)

 レンガ造りの美しい時計塔や、夕陽を浴びてセピアに染まる石造りの建物が並んでいる。


「ああ?!俺、夢見てんのか?!」

 苦悩したように頭を抱えるようにしてしゃがんだ瞬間、背後で響く笑い声。

「眠ってないのに夢はみれないぜ?──おっさん」

 その声に俺は顔をあげる。


 金色の髪をなびかせて、青い瞳を楽しそうに細めた身軽そうな青年。

 そしてその隣に、夕陽を浴びてキラキラ輝いている淡い髪を可愛いリボンで結んで、キョトンとした表情すらも可愛い綺麗な女性が立っている。

(おおっ!スタイルいい美人さんっじゃねえかよ〜!)

「もう!ジタン……いきなり失礼なこと言っちゃ──え!?」

 見とれてた俺に視線を向けた彼女が、目を丸くしたまま固まった。

「ん?ツカサこのおっさんと知り合いなのか?」

 ジタンと呼ばれていた青年が、固まったままの彼女を覗きこむようにして聞く。

「知り合い……じゃ、ねえよな〜。俺が、こんな綺麗な姉ちゃんと会って忘れるなんてこた〜あり得ねえ!」

 うんうん!と大きく頷き言う俺を、思いっきり目を細めて睨むように見てくる金髪青年。

(……ジタン、だっけか)

「ってか!おっさんって言うんじゃねえ!俺はまだ若者だ!バリバリ現役だっつの!」

「なんだよ、バリバリって。その言い方がもうおっさんなんだよな〜」

「ああ?!バリバリはバリバリだろ!だいたいおっさんって言う奴がおっさんなんだぞ!」

「あ?俺はどう見てもあんたより若いっての!おっさんにおっさんって言って──」

「もう!二人ともちょっと黙って!」

 ジタンの声を遮って、響く鋭いツカサの声。

 思わず息も止めて俺はジタンと顔を見合わせる。ピタッと動きと息を止めた俺たちを見て、彼女が「はぁ……」とため息をこぼした。

「あの、私ツカサって言います。彼はジタンです」

「おう!俺はラグナっつ〜んだ。よろしくな」

 にかっと笑ってそう言えば、彼女が一瞬困ったように眉を寄せ、それから俺を見て微笑んだ。

「ラグナ……さん、何か困ってたように見えたんですけど……何かあったんですか?」

「いや、それがよ〜何がなんだかわかんねえんだっけどよ〜。森の中にいたはずなのに、気づいたらここにいたんだよ。ところでここどこだ?」

 もう一度辺りを見回して首をかしげる俺に、ジタンが驚いた顔をする。

「瞬間移動でもしたのかよ、おっさん。──ここは、リンドブルムの城下町だぜ!ちなみにここは劇場区だ」

「りんどぶるむ?」

「そっ!」

 そう言ってにかっと笑みを浮かべるジタンの隣で、何か考えこむように俺を見つめるツカサ。彼女がぼそりと呟くように言う。

「……まさかの──ですか」

「は?」

「ん?」

 彼女の言葉が聞き取れずに、俺とジタンが視線を向けると両手を振って苦笑いするツカサ。

「ん、ううん、こっちの話!」

(とりっぷって聞こえたよ〜な……)

「えと、ラグナ、さんは気づいたらここにいたんだって言ってましたけど、他に覚えてることあります?」

「ん〜と……なんか金色の光みたいなのが見えて、その光に近づいてったのは覚えてんだけどよ〜」

「金色の……光?」

「金色の光ねえ……」

 二人が「う〜ん……」と唸りながら考えてくれる。

(会ったばっかの俺のためにやっさし〜よな)

 二人揃って首をひねる姿を俺は見つめる。

(美男美女のカップルってやつか……?クソ〜……ジタン、うらやまし〜ぜ)

「お、おい!おっさん、後ろっ」

 ジタンが突然声をあげ、俺の後ろを指差す。

「こ、これ金色の光?」

「お、おおっ!こ、これだ〜!!」

 振り向いたすぐ先に、見覚えのある金色の光を見つけて俺は飛び跳ねる。

「こ、これでたぶん戻れるぜ〜!」

「よかったな、おっさん!」

 安堵の息をつく俺の肩をバシッと笑顔で叩くジタン。

「ラグナさん、良かったね」

 そう言って微笑んでくれるツカサの笑顔は、俺が幼いころ夢で見た天使みたいだ。

「ツカサ〜!あんた天使だ!俺の天使!」

 感極まってツカサに抱きつこうとすると、ジタンが彼女の腕を取り、俺からツカサを背後に隠すようにした。

「ちえっ!いいっじゃねえかよ〜。最後の包容ぐらい!ヤキモチ妬きは嫌われっぞ〜」

 ジタンだけに聞こえるように、耳元で小さく言う。

「うるせ〜……」

 俺の言葉が図星だったのか、少しだけ耳を赤くしてジタンが言う。

「最後の包容がしたいなら俺がしてやるよ」

 そう言っていたずらっ子のように舌をベッと出すジタン。そのジタンの後ろで、「ええ?ジタンとラグナ、ハグするの?!」と、ツカサの引いたような声。

「まさか!冗談だって!」

「え〜……ちょっと見たかったかも」

 そんなこと言い合う二人。そのほほえましさに、俺の顔は自然と笑顔になる。

「あ、おい、光が……!」

 ジタンの声に光を見るとさっきより弱まって見える。

「や、やべ〜!よし!俺、行かね〜と!」

「おう!また会えるかわかんないけど元気でな!おっさん」

「ラグナさん!……会えて、嬉しかった……!」

「おう!俺も二人に会えて嬉しかったぜ!ジタンとツカサ、ありがと〜な!……じゃ〜な!!」

 手を振ってくれる二人に、俺も手を振り返し光に飛び込む。

 そして……ぐにゃりと歪む視界。歪んで掠れていく二人と絵本のような街並み。



「……ナ!ラグナ!!」

(……ん、んあ?)

 パチパチと頬を打つ痛みに、俺は目を開く。視界に映るのは、キロスとウォードの心配そうな顔のアップ。

(……え?!俺、寝て、たのか?)

 横たわった自分の体を、慌てて起こす。

「急に走って行ったかと思えば、倒れてるから驚いたぜ」

 ウォードがホッと息を吐いて俺に言う。

「何かあったのか?」

 キロスに聞かれて、俺は周りをキョロキョロと見渡す。

「いや……なんっか綺麗な街に行ってよ──生意気だけどなんっか憎めない男前な兄ちゃんと、天使みたいな綺麗な姉ちゃんに会って──仲良くなった……」

 俺の言葉を聞いてキロスとウォードが顔を見合わせる。

「頭……打ったんじゃ」

「脳の病気かもしれん」

「だあ!マジだっつ〜の!!」

 キロスとウォードが、可哀想なものを見るような目で俺を見る。

(クソ〜!こいつら信じてねえな)

 俺は立ち上がり、二人に詳しく話そうと口を開きかけて閉じる。

 ──ま、い〜や。俺だけ信じてれば。


 ジタンとツカサ。


 優しくって楽しい二人と、不思議な夢みたいな出会い。

 なんとなくもう会うことは出来ないような気がするけど……俺はずっとあの二人を忘れないだろう。

 金色の光の先で過ごした、楽しい二人との時間を。


*END*







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相互記念に頂きました!

うちのFF9長編「君と私と世界と。」に登場する夢主とジタンをFF8のラグナたちとコラボしてくださいました!
素敵………!!
金色の光ってどこにでも繋がれるんだなって思ったら、この設定にしてよかったと本当に思いました。

いつもお世話になっているのに、本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願い致します(*^^*)



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『 secret garden 』










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