ナイト様たち




※先輩幼馴染み設定です。









「また喧嘩?」


保健室にいるからお願いね。と大事な友人が言うから来てみれば、保健室のベッドで横たわる幼馴染みの姿。
どうやら喧嘩の相手はもういないようで、そこには彼1人だった。


「………べつに」

「ふふっ。キスティスに頼まれたから、とりあえず“喧嘩はダメ”って先輩として言うね」

「………何だよ、それ」


ワンテンポ遅い返事をする時は頭の中で色々考えている証拠。
きっと「サイファーに言ってくれ」って思っているに違いない。


「仕方ないじゃない。こんなの建前みたいなもんでしょ。
じゃあ、これは幼馴染みとして言うね。“やられたらやり返せ”」

「矛盾してないか」

「そう?正当防衛ならいいじゃない。
その“適当に相手をしてやり過ごす”っていうスタンスやめて、たまには本気で喧嘩してみたら?幼馴染みなんだし」

「………それならサイファーとも“幼馴染み”のツカサは、売られた喧嘩を本気でやり返しにいくのか?」


(そうきますか………)


うーん………と悩む私の回答を静かに待つ彼が可愛くて、ついつい顔がニヤけてしまう。
頭の回転が早い彼は喧嘩した後のことも考えているに違いない。
結局止めるのは俺なんだろ、とか。
爆発の中に飛び込むのは結局俺だろ、とか。


「(スコールって損な役割してるよね)
まあ………しない、かな!」

「やっぱり矛盾してないか」

「だって私が本気で喧嘩したらガーデンが吹っ飛ぶわよ。
だから、今度2人が喧嘩してたら私が本気で止めに入るわ。そしたら2人はすぐ喧嘩をやめる努力をして」

「ツカサがいない時は?」

「さあ?納得するまで喧嘩したらいいんじゃない?」


その時はキスティスが飛んでくるでしょ!と笑いながら言えば、彼が頭を抱えた。
私の自由奔放な発言がいつも悩ませてるってことくらい自覚している。それでも彼らが一緒にいてくれるのは、“幼馴染み”ということだけじゃないことも知っていた。


「あ、やっぱり喧嘩に加わった方がいいかも?
だって私がズバ抜けて強ければ2人が喧嘩する気すら起きないだろうし」


Seedは強くなくてはならないのだから、女の私が2人より強ければそれだけで可能性が広がる。いくら2人より早くSeedになったからといって、所詮女だろと言われてしまうのだ。
そう考えると、我ながら無駄がなくてすごくいい案だと思う。


「………ダメだ」

「何で?」

「ツカサは守られていればいい」


思いがけない彼の言葉に、すぐ言葉が出ない。
昔から変わらない彼に心が温かくなる。
いつだってサイファーと2人で、私を守ろうとしてくれていた小さなナイト様たち。

それが今も変わっていないだなんて、私はなんて幸せなんだろう。


「それなら早く私と同じところまで上がってくることね!」


わかってると言わんばかりの溜め息と表情に笑みが溢れる。
いつかナイト様たちが本当のプリンセスを見付ける日まで、私は守らせてあげるつもりはない。






これは、あくまで“先輩”としての想いです。







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本編より前のイメージでした。








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