ダイアモンド
ジャラ………
ジャラジャラ………
ジャラジャラ………ジャラ………
「宝石広げて何してるんだ?」
「あ、ジタン。
アイテム整理のついでに数えてるの。宝石の数で召喚獣の威力変わっちゃうから………結構重要なことだよ」
私のやっている作業に興味を持ったジタンが後ろから覗いてきた。
数え間違えないように注意しながら返事をする。
「へえ………マメだな」
「マメ………ってわけじゃないんだけど、把握しておけば敵からあといくつ盗めばいいかわかるでしょ?
ジタンには前戦で敵を倒してもらわなきゃだし、そうすると私が盗むことは必然ってこと。
それに、綺麗なものは好きだから全然飽きないわ」
今まではアイテムが何種類あって、数がどれだけあるか数字を見ればわかった。しかし今見ているものは画面ではないため、こうして整理しておくことが大切なのである。
「ジタンも一緒に数える?
結構種類も数も多くて大変だから、こういうの苦手なら大丈夫………」
「いや、手伝うよ」
「本当?すごく助かる。ありがとう!
じゃあ私は先にポーションとか消耗品の確認するね」
ジャラジャラ………
ジャラ………
「はい、コーヒー。
お疲れ様!残りは私がやるからジタンは休んで大丈夫よ。
どう?宝石数えるの楽しいでしょ。ジタンはどの石が好き?」
「どう?って………これだけ数えてると好きとか嫌いとかなんてよくわからないさ」
それもそうだね、と納得すると何だか笑みが込み上げてきた。それほどにまでジタンが集中して作業していてくれたことが嬉しい。
宝石の転がる音しか聞こえないこの空間が穏やかで気持ち良くて、ついつい作業の手がゆっくりになってしまう。
「そうだな………ツカサにプレゼントするならダイアモンドかな」
「(ダイアモンドって………)え?」
この世界にも石言葉があるのか、婚約指輪などの大切な時に使う風習が同じなのか、それとも全くそんな意味合いがないのかさえ私は知らない。
このタイミングでは訊くこともできない。
「すごく似合いそうだよな」
「そうかな?でもダイアモンドが似合わない人なんて見たことないよ」
「どうして?」
「どうしてって………もらう人はみんな幸せそうだから?」
そう答えるとジタンは嬉しそうに、うんうんと頷く。私は頷く意味がわからなかったので首をかしげた。
「そう、ダイアモンドは“もらう物”なんだよ。今ツカサは無意識に“もらう人は”って言ったんだ。
それってつまり、そっちの世界でもダイアモンドは特別な物なんだろ?」
「えっ?え、えっ?」
「なんだよ、まだ意味がわからないのか?」
わかるような、わからないような………私の頭の中は混乱していた。
“そっちの世界でも”ということはこの世界でも?
「ツカサに渡すならダイアモンドさ。
なあ、受け取ってくれるだろ?」
差し出されたジタンの手の中にはキラリと1粒のダイアモンドが輝いていた。そして目をしっかりと合わせたまままスッと跪く。
私より年下なのに、その姿がとても様になっていて悔しい。
(………カッコいい、なんて絶対言わないんだから)
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ダイアモンドの石言葉
“変わらぬ愛”
他にも石言葉はありますが、この短編ではこの言葉をイメージしています。
石だけ渡されてもどうなの?って感じですが、ジタンみたいな人に一途なところを見せられたらときめくしかない。