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 仮装したっていいじゃない!




「これとー、これとー………あ、これも。とりあえず皆さんこれ着用で、嫌だって人は頭だけでも………」

「ツカサ、何してるの?」

「あ、ティファ!今日はね、ハロウィンだからハイウィンドをハロウィン一色にしようと思ったの」

「ハロ、ウィン………?」

「そう!元々色んな意味があったんだけど簡単に言えば、若者にはお祭りみたいなものなの。
みんな仮装して、トリックオアトリート!って言ってお菓子をもらうんだよ」

「トリック、オアトリート………?」

「ティファはスタイルいいからバニーガールかな!はいっ、これ着て」


困惑しているティファに衣装を手渡す。
今回2人で船内を練り歩くつもりだ。本当はユフィも含めて3人でやりたかったけれど………船酔いが酷いから無理だろう。


「私は女ポリス〜。これスカートきわどいけど大丈夫かな………」

「ツカサ、これはちょっと………」

「おお〜、足綺麗だからバニー似合うね〜」


船内も大体飾りつけが終わり、パイロットの方々もノリノリで小物やマントを服の上から着けてくれる。
いつもと違う服装に、みんながとても楽しそうで嬉しくなる。

仮装の準備も終わる頃、物音と話し声が聞こえてきた。買い出しに出ていたみんなが戻ってきたのだろう。


「なんだぁ?これ」

「(ティファ、行くよ!)トリックオアトリート!」

「「………………」」

「ん?トリックオアトリート!」

「………………ツカサ何してんだ?」


何だかみんなが想像と違う反応をする。人間って驚くと止まるのって本当なんだなって思った。


「いい?今日はね、ハロウィンなの!ハロウィンっていうのは………(以下略)
だから今日トリックオアトリート!って言われた人はお菓子用意しておくこと〜。用意してなかったら激しくイタズラするからね!」


もちろん貰ったお菓子はみんなで分けるつもりだし、私だって不意打ちで言われてもいいように用意している。
みんなから何が貰えるかを考えるだけで私はわくわくしていた。


「激しくイタズラって何!?」

「あ〜んなことや、こ〜んなことよ」


そう言うと数名ほど再びハイウィンドを降りていく姿が見えて、少しだけS心が揺さぶられたような感覚がしたけれど楽しみの方が大きかった。














「「トリックオアトリート!」」

「!」


最初はシド。絶対準備してないと思ったからこその最初だった。


「ほらよ」

「何これ、タバコじゃない。私たち吸わないわよ?」

「よく見てみな。タバコのようなパッケージのチョコなんだとさ」


そう言われてパッケージの裏を見るとチョコの内容表示が書いてあった。


「へぇ〜、お洒落ね」

「わー!ありがとう、シド!!
じゃあ、シドはこれを着てハロウィン楽しんでね!」


ポンっと衣装を投げ渡すとシドが何かを叫んでいたが全員のところを回らなければいけないため、聞こえないふりをした。


「何だかみんなのが個性出て面白いなあ〜」

「ええ、バレットとかどんなの用意するのかしら」


くすくすと2人で笑いあい、楽しいねと言って次へ次へと向かった。

レッドXVは故郷をイメージしたというキラキラして可愛い金平糖。

ヴィンセントはカラフルでお洒落なクッキー。


「ツカサがこういうの好きだと思って」


そんな素敵な台詞付き。
一瞬口説かれているのかと思うほど、低くて優しい声にドキッとした。
この2人には手頃な衣装がなかったし、ヴィンセントなんてそもそも仮装しているみたいだったから必要ないかも?と思ったけれど、バニーちゃんと猫耳だけ渡しておいた。


そしてお次はバレット。
お決まりの台詞で近付くと嫌そうな顔で舌打ちされる。


「チッ………ほらよ、用意はしたんだ。文句は言うなよ」


ぽんっと投げ渡された物を見ると、何とも言えない可愛さのテディベアのぬいぐるみだった。


「何これ!めっちゃ可愛いー!!!」

「さすがはバレット。マリンが好きそうね」


背中にチャックがあるところを見ると、きっとテディベアのお腹には飴が入っているんだろうなと思った。


「じゃあ、バレットもこれ着てね」


お決まりのセーラー服を手渡すと、激しい雄叫びのような声が聞こえた。だってそれしかないんだもの。


その後ケット・シーのところに行くと、まるで本人のような真っ白のマシュマロをもらった。
ユフィは………甘い物どころじゃないよ!って俯きながら叫んでた。でも一応くれたよ、千歳飴。


「ティファ、千歳飴って知ってる?」

「ちとせあめ?」

「さっきユフィがくれたやつ。これ大体1本が長いんだよね………どうやって分けようか」

「シドにあげればいいんじゃない?タバコやめるかも」

「あ、その手があったね」

「クラウドは何を用意してるかしら?」

「何だろ。ニブルヘイムの特産品とか真顔で渡してきそう」


それはそれで笑えるね………なんて話しながらクラウドを探した。












「あ、いたいた。クラウドで最後だよ。
トリックオアトリート!お菓子くれなきゃ激しくイタズラしちゃうぞー!」

「………………」

「あ、あれ?まさかここにきて1人だけ何もない………とか?」

「あら、そんなことないと思うわ。後ろに持ってる“それ”違う?」


“それ”と言われた物に目をやると、確かにラッピングされた大きめの箱を持っていた。


「こういうの………慣れてないんだ」

「そっか。じゃあ私がいる以上、慣れないことだらけだよ。諦めることね!
と、いうわけで………トリックオアトリート。それちょーだい?」


少し顔がひきつったように見えたけど気にしない。
クラウドは無言で手に持っていた物を差し出した。


「わー、何だろね。こんなに大きな箱。さ、開けるよー!
………なっ!!」

「どうしたの?」


ラッピングを開けると、大きめの箱から出てきたのはケーキ。
しかもチョコボ&モーグリの形をしていた。


「こ、これどうしたの!?まさか作ってないよね!?」

「レースで連勝したらこれもくれた。まぁ、タイミングとしては丁度よかったのかもな」

「すごいすごい!早速みんなで食べよ!」















全員を集めて集まったお菓子の紹介をする。

目を輝かせるレッドXVがとても可愛い。
ユフィも何だかんだ興味があるみたいで、一生懸命身を乗り出して覗いている。


「あら、みんなちゃんと仮装してくれているのね」

「本当だ!レッドXVなんてバニーちゃん付けてて、耳いっぱいある………」


気付けば夜も更けていて、飲んだり騒いだりみんなでハロウィンを楽しんだ。
輪を少し外れてその光景を眺めると何とも言えない温かい気持ちになる。


「………もういいのか?」

「あ、クラウド。いつもと違う格好しているから誰かと思っちゃった」

「この衣装渡したのアンタだろ」

「不服?バレットのセーラー服と逆でもよかったけどね」


そう言うとクラウドは嫌な顔をして黙ってしまった。
冗談に決まっているのに、真面目に受け止めるところが可愛い。


「…………トリックオアトリート」

「え?あ、ゴメン。ついさっき最後の1個あげちゃったの」

「そうか。なら激しくイタズラしていいんだよな?」


ニヤリと黒い笑顔で私の腕を掴んだ。
その笑顔に恐怖を感じながら、私は問答無用で連れ去られていったのだった。










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2016年ハロウィン











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