・・・んじゃないわよ
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973 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/13 11:06
一年前のことです。

当時、ぼくは現役で合格した夜間の大学に通っていたのですが、
その頃のぼくは、大半のだめ人間がそうであるように
新しい環境に馴染めず、毎日が暗い日々の連続で、しばらくして
「こんな学校を卒業しても意味がない」という甘ったれた考えを
持つようになって、ちょくちょく学校をさぼっていました。
その結果、進行した講義にまったく付いていけなくなり、
ほぼ登校拒否になってしまったのですが、甘ったれなもので
そのことを親に言えず、仕方なく学校に行くふりをして、



974 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/13 11:07
毎日ふらふらとファーストフード店に入り浸って、
途方もない時間をつぶしていたのです。

その日も、そんな一日になるはずでした。

夕方の六時過ぎ、いつものように明るく家を出たぼくは、
自転車を適当に漕いで銀座へ向かいました。
そして、今はもうなくなってしまった晴海通り沿いの
ケンタッキーの前に自転車を停めて、ホットティーを注文し、
店員に聞かれる前に「ミルク」と言うと、トレイを持って
二階にあがったのです。

二階は、通路をはさんで四人掛けのテーブルを二つ置いただけで



975 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/13 11:08
いっぱいになるような幅の細長いフロアで、
階段を昇って左側がトイレと喫煙席。
そして右側が窓と禁煙席でした。
ぼくはタバコがだめなので、いつも禁煙席にトレイを置きます。
こちらの席は、何故か二人掛けのテーブルが多い印象があり、
実際、ぼくのように一人で座っている人もちらほらと見かけます。
あのころは、これを見るたびに
「タバコが吸えたら、ぼくも友達ができたんじゃないか」
と考えて、暗くなっていました。
その日も、そんなような事を考えながら、本を読んでいたのです。



976 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/13 11:09
三十分くらいそうしていたでしょうか。
人の動きが視界に入ったので見ると、一人の女性がトレイを運び、
丁度ぼくの真向いのテーブルに座るところでした。
その女性は四十代くらいで、胸まである長い髪をとかさないで
ボサボサにしていたのを覚えています。
そこまで見ていてなんですが、特に興味もなかったので、
ぼくは本の続きを読むことにしました。
一人の客なんて他にもいるし、なによりぼくもその一人だからです。
ところが、しばらくして不思議なことが起こりました。
一人のはずのその女性の席から、話し声が聞こえてきたのです。



977 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/13 11:10
「電話?マナー悪いな」
そう思ったぼくが何気なく彼女の方を見ると、
電話などどこにもなく、
彼女はただ、うつろな目をして、誰もいない空間に向けて言葉を発していたのです。

‥‥あのさ‥‥ねってやっぱ‥‥
‥‥でもきの‥‥つい‥‥やめ‥

喋り続ける彼女を前に、ぼくは席を立とうと思いました。
実際、彼女の影響でまわりの客はみんな帰ってしまい、
禁煙席には彼女とぼく以外誰もいなかったのですから。
しかし、時計を見ると帰るにはまだ早く、最低でも
あと30分はここにいなければ親に疑いをもたれてしまいます。



978 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/13 11:11
仕方なく、ぼくは本の続きに目を走らせましたが、
内容は全く頭に入ってきませんでした。

それから10分ほど経ったでしょうか。
彼女は相変わらず喋り続け、ぼくの方も少しずつ馴れてきた頃、
ぼくの胸の中で先程までの恐怖心が薄れ、
かわりに好奇心が鎌をもたげていました。

一体、何を話しているのだろう?

彼女の声はとても小さく、内容までは全く聞き取れなかったのです。
さっそくぼくは、念のため目を本から離さず、耳だけに
全ての神経を集中させました。

‥‥わよ‥‥ないわよ‥‥



979 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/13 11:13
それでも彼女の声は聞き取れず、ぼくはさらに耳を澄ませることにしました。

‥ゃないわよ‥‥じゃないわよ‥‥

どうも、さっきから同じフレーズを繰り返しているみたいなのです。

‥‥んじゃないわよ‥‥でんじゃないわよ‥‥

──彼女の言葉がハッキリと聞こえたとき、
ぼくは耳を澄ませたことを後悔しました。

彼女は、
ずっとこっちを見つめながら、こう言っていたのです。



本なんか読んでんじゃないわよ


実話です。
心霊じゃなくてスマソ。

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