※千鶴ちゃんnot人間設定です
無理って方は見ないことを強くお勧めします















増え続けていた人間の数。それのグラフを見てみると、ある年からピタリと増加が止まって横這いに。それから間もなくして下降傾向になった。
先進国では産業や医療機関よりもとある科学の発展に資産を注ぎ込み医療システムが歪みはじめている。
そんな先進国の影響を受けた発展途上国は荒れ果てた土地を殆ど奪い取られ研究所へと形を変えた。
相変わらず潤わない社会は容赦なく乾いていく。
少子高齢化社会で悩む日本では、平均寿命がだんだんと右肩下がりとなってきた。が、高齢化の問題は山積みのまま。少子化なのは変化せず政府は頭を抱える。

どうしたら働ける若者を増やせるか。

先進国である日本もまた研究を始めた。
完全な人間を造ることは道徳に反する。ならば代わりに人間に似せた、人間に近いモノを作ればいい、と。
目標が決まればそこからは早かった。実験に実験を重ね研究し、追求し、そして作られた。いや、生まれた。



「――この誕生により、現在の人口のおよそ二割を補うことが新たな目標となり我が国では更に…―」



画面をポインタで示し淡々と説明していく教師。薄暗いから自然と眠たくなる。あくびを噛み殺すのにもいい加減限界がくるんだけど…。
この学校はそんな風に説明される奴らと共に過ごす為にあると言っても過言ではないはず。現にクラスメイトの内十数人は"そう"だ。
クローン…じゃない。アンドロイド…なのかな、やっぱ。
まだ慣れないその存在。好意的にとらえる者も居れば批判する奴も居る。当たり前だ。オレはなんか、そういうので考えるのは苦手。単純に好きか嫌いかだと、やっぱどっちでもない。だって「ただのクラスメイト」にそんなふうに考えることってないはずだし。

仮にアンドロイドと呼ばれる奴は本当にプログラムされたような動きしかしない奴に対して、人間を見下すような態度をとる奴、所謂人間にしか見えない奴とに分かれている。後者はまだまだ希少な存在らしく、このような学校…施設を設けてまで緻密に研究されているらしい。
で、本当の人間と共に生活すれば何かしらのデータが録れるとのことで、厳重なのか軽いのか、受験という審査に受かったオレ。なんだかなぁ〜…。



授業が終わり昼休み。ガタガタと席を立つアンドロイド(仮)たち。ああ、そっか昼飯か。
人間のように接していても、こういう場面を見るとやはり自分とは違うのだと実感してしまう。


「平助くん」


でも、ひとりだけ。また違った奴が居る。


「おーちづる。なに?」


オレがちづると呼ぶクラスメイトも、教室から出ていく奴らと同じ。オレらとも同じ。でも、やっぱ何か違くて…。……何が言いたいのかさっぱりわかんねぇ。


「放課後に行くんだったよね?」


ふわりと笑って首を傾げる仕草。似ているなんてものじゃない。そのままだ。
「ああ。」返事をすれば呼ばれて慌てて教室を出ていった。


「奴らとの結婚制度はまだ案にもなってないはずなんじゃなかったっけ?」


茶化すように背中にのりかかってきた友人。
さっきのやり取りはよく見てるはずなのに、何処に行くんだ?と一度も聞いてきたことはない。これがこいつのいいところだと勝手に思っている。


「そんなんじゃねーよ」

「だって雪村さん、千鶴ちゃんにそっくりじゃん」


あれ、造ってもらったのか?

ひやり、背筋から冷たくなった体温は全身へと染み渡った。指先がぎこちなく動く。同時に顔がカッと熱くなった。
「悪ぃ…」謝る友人の姿に、口の中に溜めていた言葉をそのまま飲み下した。








オレの幼なじみは死んだ。

医療システムが凍結した数日間の間に、事故にあった千鶴はまともな処置を受けることも許されずに、そのまま死んだ。
憎かった。こんなことをした大人たちを憎んだ。返せよ、千鶴を返せ!システムに関わっていた親父にそう怒鳴った。涙なんて拭わずに、肺にある空気を全部吐き出す勢いで。

それはきっかけにすぎなかった。

ある日親父に呼ばれて向かった研究所。白ばかりの不気味さにオレは親父の白衣だけを追い掛けて歩いた。ほとんど同じ身長なのにがっしりとした肩幅に、場違いながらむかついていた。
キュッと靴が鳴り止まったかと思った瞬間、開いたドアの向こうにチヅルが居たんだ。
ほんの少しだけ成長したような、幼なじみの姿。同じ声で呼ぶオレの名前。


「次の春からお前たちはクラスメイトになるんだ」


こいつは千鶴じゃない。違う。頭ではわかっていたのに否定できなかった。弱い自分。喜んでいるのか?千鶴が戻ってきたから?死んだのに、もう呼ばれないはずだったのに千鶴の声で平助くんって言ったから?


「……千鶴、」


オレがそう呼ぶと、目の前のチヅルは笑って返事をした。





あの事故がなかったら。あのとき医療機関が機能していたら。千鶴が居たんだ。ちゃんと生きていて同い年になって、毎日成長して、それから……。…それから?



「今の雪村さんは違うのか?」


こいつは人が答え難い質問ばかりを的確についてきやがる。
わかんねぇよ。違いなんて。だって比べようがねぇじゃんか…今のちづると。





「充電って、」

「ん?」

「充電って言ったよな」

「…おー」

「…そっか」


小さく呟いてそれきり、友人は食べようとしていたパンを見つめていた。






( 心臓ふたつ )


20100901
大嫌い

後味悪いし意味わかんないですねこれ。厨二設定乙みたいなかんじですかね。
続くか眠るかはテンション次第。
千鶴ちゃんをロボットみたいな設定にしたかっただけなんだ!(ぶっちゃけ)






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