『お前の結婚相手決まったから』



半年前のことだ。
それは「今夜のご飯はハンバーグ!」とでも言うようなテンションで告げられた。
兄が突発的に決めるなんていつものことだが、今回は大目に見ることなどできない。
自分の人生に関わる問題まで勝手に決められては困る。凄く困る。迷惑だ。

良い嫁さんになるぞ、あんな妹ができるなんて生きてて良かった……などと満足げに何度も頷いていた。(だからってなぜ俺が。)

どうせ酔っ払いのざれ言だろうとその時は軽くあしらった。そう、今から半年前の出来事だった。








「いやーやっぱ我が家に可愛い女の子が居るのっていいよねえ」
「何処が誰の家だ。早く帰れ」
「冷たいなぁ斎藤くんは。折角可愛いお嫁さん見つかったっていうのに」
「……………。」
「あ、千鶴ちゃん帰ってきた」


それから半年後の現在。
冗談だと思っていたその相手とやらを見たのは四ヶ月前。
無茶苦茶なことばかり言う兄にも俺にも何も言わず、ただただ笑顔で居た。
「お前ら一緒に住め」と又もや完全な思いつきで放たれた一言に対抗しようとしたが、笑顔付きのよろしくお願いします、という静かな声に、ついに頭が真っ白になった。
そして今、こうして同じ家に住んでいるのだが、


「おかえりー千鶴ちゃん」
「ただいま帰りました」
「……」
「ただいま、です。斎藤さん」
「…ああ」


にこにこ、にこにこ。どうにも俺はこの"雪村千鶴"という人間について、未だよくわからないでいるみたいだ。





20100514

お互いよく知らない同士の同棲生活を書いてみたかったんです

まだ続く……予定



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