(ポンペイ+オズ/わくわくアニマルマーチ)
感謝、という言葉では何だか安っぽすぎる。かといってありがとう、と言うのは仰々しくて恥ずかしい。そんなことを今も昔も人間は悩んだから、こんな感謝祭なんてものがあるのだと思う。
「今年のタオはよぉ、どうやら良い人がいるみたいでなっ。あいつにもとうとうそんな時が来たんだなァ」
オズお手製のさつまいもケーキは、砂糖が控えめなうえにこんがり焼けた生地がほろ苦く、さつまいもの煮っころがしをそのまま潰しただけみたいに思える。塩気もかなり感じるが、砂糖と塩を間違えたという可能性は指摘しないでおこう。
「タオくん、勇気を出してケーキを渡しに行ったんだろうね。慌ててたのか、いつも肌身離さない麦わら帽子がそこに置きっ放しじゃないか」
漁協のテーブルの上に置かれた麦わら帽子を見て「あれェ、本当だっ」と言ったオズと共に、わしたちはひとしきり大笑いした。
「パオは灯台に行っちまったし、今年もおれっちたち老いぼれ組で乾杯でもすっか!」
「わしはともかく君はまだ若いだろうに」
「同じようなもんよ、同じようなっ」
麦酒を二組のジョッキに注ぎ込んで、二人で盛大に乾杯する。昔の話も今の話も、積もるほどある。