(魔法使い×ヒカリ/わくわくアニマルマーチ)


あまりの温さに、蕩けそうになる。心と身体が、空間と時間の中に。胸いっぱいに吸い込む空気が、こんなにも色とりどりだとは。珈琲から登る湯気が、魔法のようだとは……。
魔法を使わない魔法使いは、今日も明日も彼女に「魔法使いさん」と呼ばれる。本の項目を述べるような、無味乾燥な響きを込めて。
……牧場主さん。何気無く彼女をそう呼んだ時、ゆっくりと微笑んだ彼女はまるで別人に思えた。この町に来たばかりの時は、みなさんにそう呼ばれたものです、と懐かしんで見せる。
心の奥底できらめく水晶の湖が、全て蕩けていくようだった。きらきら光るそれは、間違いなく自分の中に住まう魔法だった。目を瞑ると、なくした魔法の残影が暖かな流れ星となって、闇の中に蕩けていく。静かに、静かに、蕩けていく。

「……ヒカリ」

目を合わせた時に弾ける小さな火花は、魔法ではなかった。




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