(リーリエ+レーガ/つながる新天地)


花が綺麗であることは、そういう仕事だからだと誰かが言った。何らかの利益があるから綺麗なのであって、ただいたずらに綺麗なものなど無いのだと。
ドレッサーの前で簡単に化粧を終わらせてから、リーリエはフレンチトーストの朝食を食べた。その日は珍しく父のモーリスと妹のメルティが朝食を全部用意してくれて、少し寝坊してしまったことに気づいたリーリエは慌てたが、家族はちっとも気にしなかった。仕事柄早朝に起きてばかりのリーリエはいつも家族で一番最初に起きて、家族の朝食を作ってから家を出る。休日は家族と同じ時間に起きて家族と一緒に朝食を用意しているのだが、今日の彼女はメープルシロップの雫が頬に滴るのも気づかない動揺し様だ。そんなリーリエを、モーリスとメルティは温かくもくすぐったい気持ちを込めて見守っていた。
タンポポ色のワンピースの裾と、レースのカチューシャのリボンが風に優しく揺れる。ギルド前に立ち晴天の空を見上げるリーリエの横に、青年の料理人が通りかかった。

「おはよう。こんな所で立ったままって、誰かと待ち合わせ?」
「う、うん。そうだよ」
「イブキと?」
「うん。知ってたの?」
「いや、推測だよ」

この町じゃすぐに広がる噂からね、と料理人のレーガは笑い、朝の散歩がてらに輸入品を見に貿易ステーションに赴く。様々な種類のものが置いてあるなかから、ぱっと黄色いチューリップに目がいってしまう。朝露が零れて葉先から垂れ、花弁がつやつやと光っていた。
今日の彼女は仕事では無かったけれど、やっぱり意味のある綺麗さなんだな、とあのタンポポ色のワンピースの揺れる様を思い出しながら、レーガは黄色いチューリップを一輪だけ購入した。





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