(ベグビー→サラ/GB3)


合わない視線は、空中を彷徨う旅人。赤い蝶ネクタイがいつになく萎れて見えた。

「ねえ、なにか隠してる?」
「い、いや?別になにも?」

微妙に上ずる声が更に彼女の疑いを深め、納得いかない顔で眉間に皺を寄せてぼくの顔を覗き込む。

「いいやっ!何か隠してる!」
「そんな言い切らなくても」
「大体さあ、ベグビーってマイペースだからかしら、わかりにくいのよね」

何考えてるかとか全然、と悩む仕草をしながら開けっぴろげに言う。そんなサラはこの見た目通り本当にわかりやすいし、探究心の強い子だ。

「まあ、そんなことより。温泉でも入っていく?」
「いや、うちに温泉あるし」
「そうだねー、ははは」

無下も無く断られる島の湯旅館のオーナーは、それでも憂鬱にはなり得ない。

「じゃあ、この花束とか受け取ってみる?」
「いや、うちに……って、え?」
「ほら、いつも蕪とか貰ってるお礼」

わかりやすく驚く彼女は、あまりプレゼントを受け取ったことは無いのだろうか。そんなことはないだろうけれど、花束というセレクションが如何にも思わせぶりで失敗したかもしれない、と思ったが数秒で喜ぶ彼女を見ると、まあいいかと思いなおした。

「あ、ありがとう!嬉しい……はっ、まさか何か企んでいるの!?」
「酷いなあ、ぼくがそんな風に見えるかい?」
「だって、ベグビーってよくわからないし……何でいきなり」
「何も無いさ。ねえ、サラ」

こんなに信用されてないのも悲しいことだが、確かに小さな嘘はついているかもしれない。このプレゼントに一欠片の企みも入ってないと言ったら、それは真っ赤な嘘だ。嘘つきは泥棒の始まり、とか言うらしいから、ぼくはこの花束に全ての思いを込めて、泥棒にはならないよう努力しようと思う。
結婚とか恋とかロマンチックに映画のタイトルは謳うけれど、要するにこれは泥棒なんだからさ。ねえ?




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