(ギル×アカリ/やすらぎの樹)


小さな鳥籠に、花弁を一枚、二枚。
これは何の遊びなの、と犬のようにつぶらな瞳が、無性に憎らしく思えた。鳥籠に入る覚悟はあるかと聞いたら、入らないよ、私鳥じゃないから、と言い放つその真っ直ぐさ。高さの同じ視線が、しっかりと結び合う。
何だか檻のような部屋、という彼女の言葉と違って部屋には格子の一つもなく、大きな天蓋付きのベッドと枯れそうなポトスが四隅に鎮座しているのみ。けれど、ドアも窓もあるのに、檻のような重圧感を感じるには充分な部屋だった。
可笑しいかもしれないが、今だけは独占させてくれないか。アカリのことを。開け放たれた鳥籠の中で、愛という重い鎖をからませ。
幻滅や恐怖の色も無く、ただ、ほんの少しの不安と恥じらいを見せて。いいよ、恋人だからね、と明るく笑う君。自分でも恐怖を感じる言葉に、彼女ときたらいつも何でもない日常であるかのように受け止めてくれる。ほら、花弁を一枚、二枚。小さな悲鳴すらあげず、いつのまにか泣いているのは僕の方だった。どうしてこんなこと。どうして。ただ、君が好きなだけなのに。一体いつまで、失う恐怖に怯えているのか。
「ギル、それでいいんだよ」
嗚呼君は許してくれるのか。鳥籠に囚われてなおも。だから、首を締めていた真綿を床に投げ捨て、その温もりを大切にしたいと、願いを込めてキスをした。




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