(魔法使い←アカリ/わくわくアニマルマーチ)


「ねえ、魔法使いさん!」
「……何?」
「魔法使いさんの好きなものは?」
「……コーヒー、と、タムタムダケ」
「魔法使いさんの好きな人は?」
「……いない」

更に魔法使い、さんの……と言いかけていたあたしは、至極重要で悲しみの淵に落とされそうな言葉に直面したにも関わらず、不思議と明るい笑顔でからっとした心のままだった。これは、空元気とも言うのかな。変に頭が重い。
彼はあたしがいることなどお構いなしに、望遠鏡のレンズを覗き込んでいる。大きな大きな望遠鏡は、小さな彼を包み込んでしまいそう。じゃあ、また来るね!と呼びかけても、そのままの姿勢でひらひらと手だけ振ってくれた。これだけでさっきの気持ちが一転して舞い上がりそうになるのだから、何てあたしって単純なんだろう。彼の心はきっと複雑で、あの水晶玉の向こうにも霧がかったように見通すことが出来ないんだろうな。逆に、彼にとってみればあたしの心など丸見えで。急に恥ずかしくなって、勢いよくドアを出た。外は少し肌寒い秋の夜で、見上げた空には星がちかちかと瞬いていた。星座のどれもわからないあたしは、呆然と眺めながら一つ一つの星の瞬きを見ていた。
今、あの人はどの星を見ているのかな。全部の星になるだなんて贅沢は言わないから、君に見てもらえる星になりたいよ。そう願うけれど、遠い遠い果てにある星のヒカリになることは、自分には絶対無理だと、何処かで気づいてしまっている。隣で君の手元を照らす、小さなアカリにしか。




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