(クリフ×クレア/ハーベストムーン)


泥だらけで使い古されたオーバーオールを着て、クレアさんはマナさんから受け取ったブドウ酒を飲んでいた。

「クレアさん」
「なに、クリフ」
「ワンピース……着ないのかな、って」

先日どこかのお宅がクレアさんの着たきり雀状態を哀れに思ったのか、女の子らしいワンピースやスカートのお古をあげたという話を聞いた。だからほんのひと時でも、あの女神祭の時の彼女のように麗しい姿を見ることができるのじゃないかと内心うきうきしていたのだけど、今日のオーバーオールを見た限り、そんな予感は微塵も無い。

「ああ、あれ。貰ったのに悪いけど、農作業で汚れちゃったから捨ててしまったの」

残念そうな口調だが、安堵も感じる凛とした声。ここに流れ着いた時の彼女は、まるで声の代わりに足を手に入れた人形姫のように寡黙で、その肌は白かった。今は血が通った温かい肌を連想させるぐらいに、頬には真新しい汗の跡や煤が付いている。

「そうか。それはとても……」

残念、と言うには、今のクレアさんも輝いてみえる。何故だろう、僕の心が変わったのだろうか。眩い光に顔をしかめることも無く、温い陽だまりの中で過ごすようになった。雲間から差し込む斜光は、僕の狭い世界の外側にいっぱい溢れ出していて。

「素敵だね。いつものクレアさんで、さ」

言い終わった後に、どこか皮肉的な響きがあるように自分が感じて、バツの悪い顔をして地面をきょどきょどと眺めてしまう。クレアさんは動揺するでもなく、くすくすと笑うと「ありがとう、クリフ」と一言お礼を述べる。ただその一言が嬉しくて、目の前のオーバーオールを着た女性が、この上無い綺麗なドレスを着ているように見えた。




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