(リーナ→ユウキ←アニス/わくわくアニマルマーチ)


意外かもしれないが自分は、不義の誓いを結ぶほど愚鈍ではない。しかし浮浪する心はどうしようもなく、全てを推測してくれなんて言わないが、誰だって定まらない意向に悩むことはあるだろう?民衆の如何にもな軽蔑を想像すると、オレは弁明を用意すると共に、腹が立って仕方なかった。

「いいの、私はわかっているわ」

あなたが酷く困っていること、わかっているのよユウキさん、と暗い笑顔で牧場の娘が言う。何がわかっている、だ。誰が何を教えたのだろう。あなたの告白を無残にも断った酷い男の、何を知っているというのだろう。

「憧れているだけですわ、お気になさらず」

あくまでも素っ気なさを演出する、農場の娘。自分が歳上であることを気にしながらも、透けて見える恋慕の気持ちは誰から見ても痛々しい。憧れなんか抱いてもらえるような器では無かった、確実に。
そもそも、どちらかを選択しろと言われてすぐに選べる神経の方が、人徳的にどうかと思う。最初から思いを寄せていたなら別だが、頑是無い赤子のように無邪気だった自分には何の意図も無く、ただ只管慕っていただけ。いや、だけというと、少し語弊があるが。そう、わかっていると信じていたのも、憧れていると頼りにしていたのも、元はオレが始まりだったから。つまり無粋に言ってしまえば、悪意の無い思わせぶり。

器量良しの彼女等に思いを寄せる男もこの狭い田舎の地方には存在して、それとなく彼女の動向や好物を聞いてくる時は、いっそその執着さが羨ましくなる。こうして誰か一人に愛を注げたら、なんて他人事にも程のあるぼやきをこぼしながら。結婚なんていうものはタイミングとフィーリングで、妥協によって成り立つものが多い。近々二人の娘は結婚するだろう。失恋中につけこまれて、もうこれでいいわ、と。
両肩を縛るものが無くなって清々するぜと強がるのは今のうちで、一番とか順位を付けたくは無いが、最も苦痛を背負わされたのは自分だと思わされる。不義の誓いなど結ぶほど軽率では無いと怒りはしたが、言い知れない後悔が襲いかかってくるのも事実で、ふらふらとサーカスの綱渡りの途中で、渡りきれるかどうか迷っている馬鹿な状況と言えるだろう。だから、そう。少し勢いづけて飛び降り、さよならを告げてオレは死ねば良い。




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