(カルバン×ヒカリ/わくわくアニマルマーチ)


何事も口にしない方が魅力的だと言ったのは、一体誰だっただろうか。
遠い過去かはたまた捏造した思い出か、曖昧すぎる記憶は得てして自分に都合の良い代弁になりやすいものだ。そして、単に自分が主張するだけという自己中心的な思考もたまに記憶に潜り込むから、それは酷く厄介だ。

「ヒカリ」
「何ですか?」

必要最低限の返答をする彼女だが、その短い発言に多くの優しさを感じるのだから、俺ときたら相当いかれちまっているらしい。

「君は、ふしぎな子だな」

長い間、俺は人を好きになる経験が多すぎた。恋をする熱狂や寂しさも、いつか終わりが来ることを知ってしまった。風の吹くまま気の向くままに求め続けたふりをして、本当は臆病で、踏み出すことが出来なかった。全てを知ることが、全ての終わりに感じられて。

「カルバンさんは、素敵な人ですよ」

会話のキャッチボールが、思惑の遠く上を通り越していった。彼女の顔は決して無邪気というわけではなく、視線の合わない気まぐれな瞳が俺の周りをなぞってはそらす。
いつも、何かを知りたいと願いながら、いつまでもわからなければ良いのにと願ってきた。謎はわからないから、魅力的なんだ。わかってしまったら、俺の求める意味が無い。そう思ってきたのに。

「ありがとう」

ヒカリがそう言ってくれるなんて、とても嬉しいよ、と修飾文も抜け落ちる。ただただ嬉しくて、君のことが、愛しくて。
密やかに交わされる言葉少ない会話の中で、俺は終わりを恐れるよりも、終わりの先にある道を歩きたいと望む。目まぐるしく変わる世界で、君と共に。





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