クレアとカーター


「……実は、記憶が無いんです」
 深閑とした教会に何列も並ぶ席の一つに座り、説教台へと話しかける。豪壮なステンドグラスから差し込む光がゆらゆらと眩しく、説教台に立つ人物に深い影が差す。緻密な模様が描かれた緋色の絨毯が輝くが、その影は暗く深く、表情をうかがうことは出来なかった。
「懺悔室に、移りますか?」
「いえ。どうか、世間話だと思って下さい」
 狭く陰鬱とした懺悔室の中では、このすがすがしく他愛も無い話を聞いてもらうには躊躇われた。今は木曜のお昼時で、彼とわたしの他にこの場には誰もいなかった。いつも悲壮の表情を湛えていたあの青年、クリフはワイナリーで葡萄を摘んでいる頃だろう。
「ここに流れ着く前は、船に乗って何処かへ向かっていたことだけは覚えているんです。でも、それだけです。それ以前に何をしていたか、何処にいたかもわからない」
 名前は、かろうじてわかっていた。それも、くっきりと鮮明に。小さく頼りない船の上、宵闇に包まれた甲板で潮風に吹かれ、クレアと呼んだあの人の声を。
 説教台から離れた黒衣の人物は木製のパイプオルガンの前に立ち、積もる埃を手で払い落としている。舞い散る埃が霧散して消えるわけは無く、床の上を音も無く転がっていく。
「そうですか」
 その人がこちらに歩んでくると、ようやく影が薄くなり、柔和な顔をのぞかせる。わたしの隣の席に座り、共に説教台とステンドグラスの方向を見ることになる。
「では、この場所で過ごした記憶は?」
「たくさんあります」
 この場所に来てから、既に数年経った。全てを完璧に覚えてはいないが、ふと思い出すと目の前に蘇る風景の数々を記憶と呼ぶならば、きっと数えきれないぐらいあるだろう。花冠を揺らして踊る春の女神祭、樽に大量に入ったトマトと潰れて飛び散った果汁の跡、素朴な響きが重なり合う音楽祭、大切な人と共に過ごす感謝祭。祭りの日には、毎日見ている人々とは違う趣が浮かんで、特に新鮮に感じたものだ。住人の賑やかな声と、動物達との出会いと別れ。季節ごとに変わる風景。海と山と町と、わたしの住む牧場があるこの場所。柔らかな香りと、髪を撫でるそよ風が吹く場所。
「それを聞いて、安心しました。しっかり記憶があるじゃないですか」
 そう言って、神父のカーターさんは深く静かに、微笑む。時計の存在しない空間に、秒針の音が時間を刻む。
「過去も今も未来も、同じようなものですよ。記憶と時間は関係ありません。大切なのは、何を見つめるかです」
 それぞれがばらばらに分かれているのではなく、一つのものであるように。わたしがまだ上手く感覚を掴めないままに、カーターさんは会釈しながら奥の部屋へと行ってしまい、わたしに考える時間をくれた。口には上手く出せない答えが、もうあるのだけれど。
 教会から出る時に、扉の金具に自分の顔が映った。長い髪に、瞬く瞳。いつしか水鏡に揺らめいたあの顔と、同じで異なる顔だ。そう、わたしにとって全ての始まりが船の上での会話だったのだ。こうして何かを思い出せるのも、わたしが始まったからだった。 
 鏡に語りかける魔法の言葉を胸にしまって、扉の向こうに足を踏み出した。


2013/12/21 17:34



 アカリとヒカリ


「アカリちゃーん。見て見て、このお花」

 のんびりした声とは裏腹に素早くあたしの元へと駆け寄ったヒカリが両手で大事そうに持っているものは、真っ赤な一輪のアネモネの花だった。

「ん、この花うちでは育ててないよね。どこで採ったの?」
「家の裏手の方にある茂みに、一輪だけ咲いてたの。自生してるのかなあ」
「そんなわけないっしょ。あそこらへんハーブばっかだったよ」
「そうだねえ」

 尚も大切そうに花を愛で、一通り満足してから私の顔を確認する。そして、冷気で冷たくなった私の耳元にアネモネの茎を引っかけた。ヒカリの手は、指先に血が滲んだように赤く上気していた。

「ふふ、アカリちゃんかわいい!」

 さもご満悦といった風に首をかしげ両手を合わせてにっこりとほほ笑むヒカリ。大げさだなぁとあたしは呆れながらも、そんなヒカリの方が可愛いよと、心の底から思っているけれどどこか空々しい言葉を胸の奥にしまった。

「アネモネの種なんて買ったっけ。ソバの実だけだったはずだけど」
「きっと、小鳥さんが蒔いてくれたんだよ。あの病院にいた小鳥さん」

 あたしは、怪我をしていた雀がウォン先生の治療によって回復したという出来事を思い出していた。よりにもよってこんなに寒い冬に咲く花を、あの鳥がと思うとなんか釈然としなかった。

「そーだね。あの雀から、ヒカリにプレゼントってことかもね。助けてくれたお礼にって」
「あれ、それなら最初にあの小鳥さんを発見したアカリちゃんへのプレゼントだね。こうして、アカリちゃんの頭で赤く綺麗に輝いているもの」
「そんなことないって」

 いつも通りといえばいつも通りの、ヒカリがあたしをべた褒めする癖を無性に恥ずかしく思いながら、自分の耳にかかるアネモネを片手で掴む。その仕草ときたら我ながら荒々しくて、アネモネの花びらが一枚北風に運ばれていくほどだった。

「風が強いね」

 あたしの乱暴な所作を気にかけるでもなく、ヒカリはずっと風を気にしていた。その風に、ちらほらと白雪が混じってきた。こんな時は決まってヒカリは「わあ、雪が降ってきたよ〜。綺麗だね!」と、あたしに笑いかけてくるのだった。あたしは、見慣れたその展開を望んで待っていた。けれど、いつまでも風の吹く方向を見つめるきりで、どこか遠い場所を探して見えない流れに飲み込まれてしまいそうな瞳で、ヒカリは黙っているのだった。
 なんだい、なんだよ。さっきまであんなに、アカリちゃんアカリちゃんって言ってたのに。湧きあがる熱い思いが、冷たい風に晒される。この、ヒカリが持ってきた魔法のような一輪の赤いアネモネを、頭から外してしまったからだろうか。魔法が解けてしまって、もう、あたしはヒカリにとって可愛くなくなってしまったのだろうか。包み込むような温かな声でアカリちゃんと呼んでもらえないことが、こんなに寂しく辛いのか。数秒かの時間が、永遠にも思えた。

「ヒカリ、ほら」

 私は、自分がやられたようにヒカリの耳元にアネモネの花を引っかける。すると、自分が力いっぱい握りつぶしたせいで萎びた茎がぶらんと垂れ下がり、彼女の目尻の位置まで下がってしまった。まるで真紅の涙のように、広漠とした背景に花びらが美しく映える。

「……ア、アカリちゃん」
「もう一回。もう一回呼んで」
「アカリちゃん」
「もう一回」
「アカリちゃん……ふふ、ふふふ」
「なに笑ってんの、もー。ヒカリが馬鹿みたいにあたしを呼ぶ声が聞こえないと、不安なんだからさ!」
「ふふふ。アカリちゃんはかわいいね〜」
「かわいくないったらない」

 照れ隠しであたしはそっぽを向いて、ヒカリとアネモネから目を逸らした。幸せで大切で儚い、あの寂しげな横顔から。



2013/12/10 21:49



 ユウキとオセ


標高何メートルの高さだろうか、ガルモーニ鉱山の頂きが灰色の重たい雲を突き抜けていて、ちっともその様子が伺えない。大きく息を吸って口を窄めて、雲を吹き飛ばす突風でも起こしてみようとするけれど一向に動く気配もなく、力が抜けた呼気はすっかりただの溜め息になってしまった。
「そんな事したって、曇り空は吹き飛ばないと思うぜ。ユウキ」
腕いっぱいにガラス玉やクズ鉄を抱えたオセが、通りすがりに俺の一部始終に突っ込みを入れた。出荷箱に入れに行くつもりだろう。無駄にたくましい後ろ姿に無性に苛々としたので、奴の背中にダイブして驚かせよう……と思ったものの、俺相手だとオセが割と本気で怒るのは目に見えていたので、想像だけで早々にやめた。代わりに、横に並んであれこれ要らぬ世話を焼いてみる。
「そういえばよ、キャシーと一緒に乗馬レースやったんだって? どっちが勝ったんだ?」
「向こうだ。少なくとも今の所は、な」
「やけに強気だな。勝ったらご褒美のキス、でもあれば俺もやる気出るんだけどな〜」
オセの太い眉毛がわずかに動き、若干の戸惑いと焦りを確認した。その間俺はといえば、頭の後ろで手を組んで雲の中の山の頂上の方を見やり、何の気なしといった風に口笛を吹いていた。テオドール団長率いるサーカスで流れている、軽快なメロディーだ。
「お前なら、頼めば出来るんじゃないか」
「じゃじゃ馬娘とキス?」
「じゃ、じゃじゃ馬……それは言い過ぎだろ!」
「だってその通りだろ。レースに勝ったらキスしてくれるだなんて、勝気にも程があるね」
弱い男を勘違いさせちまうぐらい、厄介な馬だっていうのに。

オセの腕から、ガラス玉が一つ落っこちた。ガラス玉は見事なまでに粉々に割れたが、誰もその破壊を悔やむことは無かった。無価値に等しい、ただのガラス玉だから。


2013/12/07 10:37



 トポロジー


ハチさんのドーナツホールをリピートしてたら「心に穴があいたようにさみしくつらくなってしまう」タオさんが脳内にこびりついて離れないのでぐだぐだします。

改めて、ハート7の恋するわくアニタオさんが一番私が心惹かれるタオさんかなと思いました。思えばわくあにはハート7で告白するんですよね。タオさんのハート7(異性に対して)を要約すると「いなくならないでほしい」かなあ。割と他嫁婿キャラのハート7辺りは恋ゆえのかわいい嫉妬とかが多い中(ルークは何かかっこいい)タオさんの「いなくならないでほしい」という感じの台詞が、非常に切実で心うたれた記憶があります。心に穴があく、とタオさんが表現したのが悲しい懇願のように聞こえて…。
それで!もし本当にこの時ヒカリちゃんがいなくなってしまったら、彼の心にどんな穴があくのかなって考えるのがすごく楽しいです。ハート8以降は安定した幸せがタオさんを包んでいるので(告白成功したからとかで)、ハート8以降はもし土壇場でふられたりしても穴があくほどの悲しみはないかな?しかし、ハート7の時点で自分の恋心さえも伝えきれずにヒカリちゃんが他の人と恋愛してたり、もしくは告白して失恋した場合はぽっかりと消えない穴が残ってるのではないでしょうか。そこに何も無いことだけがはっきりとわかってしまう、心の穴が。
心の穴は、心にモヤモヤがあるよりも悲惨な感じがします。心のモヤモヤは、絡まっている糸のようにきれいに解けるものかもしれません。でも穴は例え完璧に修復できた時が来たとしても、穴があったという事実は変わらないのです。
この辺りでそろそろ自分が何言ってるのかわからなくなりました!傷心タオさん大好きなので、わくあにヘタレタオさんハート7を強く推します!!!

一方やすら樹では心の穴などあける気配も無いタオさんがハート5というかなり早い段階から、アカリと呼び捨てにしていいですか?とか言ってきやがります!!あざとさMAXだと思います!!それでアカリが困惑しつつ、い、いいけど…とか言ったらありがとうございますどうしてかそう呼びたくなったのですよ、と言って曖昧にしつつ好意を仄めかすんでしょう!?本当あざとい!!あざとかっこいい!!!

是非あなたのお好きな方のタオさんをどうぞ!!個人的にかなり別人認識してます、はい。


2013/11/14 01:34



 ヒカリと魔女さま


「この前魔女さまに貰ったボディオイル、甘いバニラとローズの香りがとても素敵でした〜」
「ふふん、当然よ。アタシが作ったものだもの」
「わあ、魔女さまが作ったものなんですか……だからだねぇ」
「だから?」
「かわいくなれる魔法がかかってるなって。どうかな、魔法の効果出てるかな?」
「……で、出てるんじゃないの? アンタって、なんかアンタって……魔女みたいよね。そうだわ、ヒカリ、アタシの弟子にならない? あの根暗バカが知ってるよりも色々教えてあげるわよ」
「私が魔女に? うーん、いいや。私はきっと、魔法が無くても出来ることしかやりたいと思いませんから」
「何よ、残念ねぇ。気が変わったら言いなさいよ」
「そうですね〜」



2013/11/05 06:51



 ユウキと魔法使い


「よぉ、邪魔するぜ。魔法使い」
「……ユウキ、か」
「お前の水晶玉、俺が取り返してやったんだし、勿論占ってくれるよな?」
「……別に、構わない。早速、見てみる…………ええと、なんだか、すごい」
「マジで? 異性関係を見てるんだろ? 日々の俺の細やかなコミュニケーションが身を結んで、かなり好感触なんだけど」
「……うん、未婚女性の住民全員が、君のことが好きみたい……すごい」
「はっはーやっぱりな。ありがとな、自信が持てたぜ」
「……でも、君は」
「ん?」
「……誰が、好き?」
「お得意の占いで見てみろよ」
「……見えない」
「じゃあ、秘密。あっかんべー」
「…………」


2013/11/05 06:34



 

前記事のタオヒカやたらタオさん変態で怖い…と誤解された方がいるかどうかわかりませんが、ご安心ください!前記事のは完璧に筆者の萌え語りです!!深夜の萌え語りです!!本当の愛に目覚めてしまったらしい筆者の!!萌え語りです!!騙りですね!!

ワンダフルライフのセバスチャンさんとロマナさんの数十年に渡る密やかなロマンスに胸ときめいてます。ワンライやりなおしたい


2013/10/15 01:47



 ヒカリサンイトシシヌ痙攣

深夜ですがいや深夜だからか今タオヒカシンドロームの前兆に見られる名称ヒカリサンイトシシヌ痙攣にビクビク震えて、リアルに号泣してぐちゃぐちゃに咽び泣いて枕を涙やら鼻水やら涎で汚してしまってるという汚い話ですみません。一人でぐずぐず泣いているのは大変辛いのですがこれもう萌えなのか地雷なのかすらわからないぐらいダメージ凄いです、はい。
……そもそもうとうとしてた時に、ヒカリさんのスパッツに秘められた色気が発揮したら!?と欲求不満の男子のように跳ね起きて悶々と、スパッツに穴を開けて牛乳とかかけたら…とか不埒過ぎることを深夜唐突にぐるぐる渦巻いて考えてしまうのが良くない。その後、でもそんなヒカリさんが薄い本でも見られないことに対する落胆やヒカリさんをこんな目で見てしまう自分に幻滅して涙が溢れてヒカリさんヒカリさん呼んで身悶えてる状況になってしまうのです!中学生男児ですか!私は!?
恐れ多くてヒカリさんのスパッツを破るなんてこと私には次元の壁を超えても不可能だと思いますが、私ではない誰かが…?他のどなたかがヒカリさんのスパッツに穴を開ける…それを私は卑しくも喜悦の表情で見守るのでしょうか。それともヒカリさんの純潔を守らねば、という使命感からスパッツに傷一つ付けないように身を呈して庇うのか…。いや、何故ヒカリさんに純潔があると決めつけてしまったのでしょう。既にヒカリさんは純潔を失くしているかもしれないじゃないですか。私が捉えたヒカリさんは全て私の理想のヒカリさんなのでしょうから。どんなヒカリさんも存在するのだと考えると、逆に私だけの特別なヒカリさんもいるのだと決めつけてヒカリさんのイメージを我が物顔で貪り尽くしている。自分こそが彼女を一番よく知っていて、自分こそが彼女を一番愛していると傲っているのかもしれません。おっとりしていて、マイペースで、明るい笑顔が素敵な、心優しい女性。きまぐれにふりかかる優しさが、偶然ではなく必然だと思えてしまうのは、正しくヒカリさんの魅力なのでしょう。彼女は、ぼんやりといつも眠たそうな瞳で世の中を見ています。何もかもを見通すような、或いは私達が普段見過ごしているものをそっと気に留めるような眼差しで。彼女は人が苦手なのかもしれない、とも思いました。町に近い場所ではなくてよりにもよって草原のど真ん中という、風に吹かれて家鳴りも酷そうな場所に一人ぼっちでやってきた。数少ない動物達や畑の中をゆったりとした面持ちで右往左往しながら、案山子でさえも浮かべられなさそうな穏やかな孤独の笑みを浮かべていました。彼女の肌は赤みを帯びた色で、夏の日焼けの度に赤みが目立って火傷を負っているかのように痛ましくもありましたね。そのことを指摘すると、麦わら帽子の赤いリボンによく映えるでしょう?と言われてしまって、いやはやヒカリさんははぐらかすのがお上手です。何処かの昼寝大好き釣り大好きな青年にも劣らないかと。寡黙か饒舌、どちらかといえば彼女は寡黙で、寡黙というには彼女は言葉を発する。彼女の言葉を沢山聞いたはずなのに、どうして私ははっきりと彼女の声を、言葉を思い出せないのでしょうね。泡沫となって消えゆくもその記憶だけはいつまでもいつまでも残って。本当に困ったものです。
ヒカリさんの存在意義については、私も擁護しきれません。ヒカリさんが存在しなくても、この世界はいくらでも成り立ってしまうのです。誰一人ヒカリさんの不在に疑問も持たず。でも、私は、貴女のいない世界で貴女を想っていましょう。時に苦しみ時に泣いて、あとの時間はずっと笑って、貴女のことを想っていましょう。例え時が経ち全てが色褪せ、誰も貴女の存在を気にかけなくなり、私でさえもヒカリさんをある日嫌いになりある日は十倍好きになりまたある日は日中ヒカリさんを思い出さない日が来たとしても、私は確かにヒカリさんを愛していると、言うことができます。それが、私の本当の愛です。


2013/10/12 04:20



 ギルアカ


「ギルー、石切で勝負しようよ!」
「何だ、唐突に。石切勝負なら、祭りの時にやればいいじゃないか」
「本番勝負一発じゃなくて、練習試合したいなって。あたし結構練習したんだけど、ほらギルって強いじゃん? 不安だからさー、一回でいいから! ね!」
「全く……今日は休日だから、いつも通り教会に行こうと思ったのに」
「行けばいいじゃん。勝負が終わった後に」
「ほう、そんなに早く終わらせる自信があるんだな?」
「へへっ、実はそうかもね」
「面白い。やってやろうじゃないか」
「そうこなくちゃ!」

「さて、どっちが先攻だ?」
「どっちでもいいけど、まずはあたしの努力の成果を見ておそれおののけーっ! なんてね」
「では見せてもらおう、その努力の成果とやらをな」
「よーっし、いっけー! ストーン一号ーっ!」
「……三回、か」
「よっしゃ、うまくいった! さあさあ、ギルの番だよ」
「三回などであんなに自信たっぷりだったとはな。僕の最高記録は六回だ。見ていろ、格の違いを!」
「あっギル、ズボンからちょっとパンツが見えてるよ」
「!?」
「おっとー、跳ねた回数は二回! 秀才ギル選手はあたしの努力の成果の前に、もろくも崩れ落ちましたーっ!」
「……ずっ、狡いぞ! アカリ! そんな姑息な手段を使う奴だったとは、見損なったぞ!」
「あはは。本番勝負では油断しないようにねっ! パンツの見えてるギル選手ー」
「ぱぱぱパンツなど見えてなーいっ! ええいもう一度だ、もう一度! お前を何度でも負かしてやる!」
「もちろん! こっちだって何度でもギルを驚かせたるからっ」



2013/10/01 15:30



 やすら樹オフィスパロ


『ワッフル株式会社』
「人と人の間に、笑顔の虹をかけよう」がスローガンの、お菓子製作会社。規模は小さい会社だが、女社長の人徳の高さからか貴賤を問わずに人気がある。
目玉商品は、虹色のバームクーヘン。

ギル(20歳)
父から受け継ぐ形で、ワッフル株式会社の代表取締役になった青年。本人は会社と女社長を心から尊敬していて、一生懸命日々励んでいる。今のところ会計や予定管理は、社長の秘書であるエリィさんに任せている。
いつも焦っているように見える。休日は射的や石切の練習をしていたりする。

アカリ(20歳)
商品開発課の下っ端社員。しかし彼女が提案したアイデアがいくつも商品として世に出て成功しているため、皆に一目置かれている。行動的でいつも動き回っているため、自然と広報課も兼任している。
同級生の専務にこき使われている……ように見えて、実は逆かもしれない。

キャシー(24歳)
広報課の課長。明るく気さくな人柄で、皆から慕われている。
アカリとは気の知れた友達同士。でも広報課の仕事もアカリにこなされてしまい、ちょっと複雑でもある。
実はチョコレートが嫌い。お菓子に対しては個性的な考えを持っている。

昼だけ開いている社員食堂では、女性に人気の若い料理人が働いている。彼は社員食堂が閉じるとすぐに姿を消してしまい、何人もの女性が後を追うがその正体は全て謎である。
果たして、彼は一体……!?


2013/09/29 10:31



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