「今日の洗濯当番はあなただったはずでしょう!!」
「だから一昨日トキヤに代わってもらっただろ!!!」


至近距離で顔面から火花を散らしているのは、瓜二つの一ノ瀬兄弟。
2人して腕組みをして睨み合っているけど、喧嘩の理由は私にとって本当にどうでもいいことだった。はっきり言ってくだらない…。
でもくだらないことで喧嘩をするって、兄弟っぽくていいなぁ、なんて。私は一人っ子なので、喧嘩する相手がいる彼らがちょっぴり羨ましい。


「それならそうと、当番ボードに書き込んでおきなさい!!」


ビシッ!とトキヤが指差したのは、一週間の当番の割り振りが書かれたホワイトボード。
基本的に毎週同じみたいだけど、その通りにできないときには交替することが可能らしい。


「トキヤだってこの前書いてなかっただろ!ボクのこと言えないんじゃないの!」


バン、とテーブルを叩いてハヤトが珍しく感情を剥き出しにしている。
でもまぁ、やっぱりたかだか洗濯ごときで喧嘩する理由もよくわからない。なにを彼らがここまで熱くさせているのだろうか…。
けれども売られた喧嘩は買うように、張り合ってしまうのが兄弟喧嘩というものなのかもしれない。


「だいたいあなたは普段からサボるでしょう!」
「トキヤだって、寝坊してお弁当作れないときあるだろ!いい加減に朝ギリギリに起きるのやめなよ!」
「朝は低血圧なんです!」
「そんなの言い訳!!」


トキヤは目覚めが悪く、ハヤトは目覚めが良いらしい。やっぱりこの双子は面白いところで逆だなぁ…。トキヤは朝しっかり起床して、テキパキ動きそうなのに…。
そうか、お弁当にムラがあるのはそういうことか。
2人のお弁当箱の中身は同じもので、まあお弁当箱もお揃いなんだけど、でもおかずとご飯が日によってばらつきがあった。私は雑な方をハヤトが、綺麗でバランスがいい方はトキヤが作ってるとばかり思っていたんだけれど…。あの豊かなお弁当は実はハヤトが作ったもので、とにかくご飯は白米でそのときは決まっておかずがワンパターンなのはトキヤが作ったものだったのか。


「けれども、あなただってだらし無いではないですか!洋服はその辺に脱ぎっぱなし!物は片付けない!」
「トキヤこそ、美容にいいとかダイエットにいいとかあれこれ買ってきて中途半端にして!そんなことしたって変わりっこないよ!!」
「なっ…あなたは!」


バシッ。
トキヤがハヤトの頬を叩いた音が、リビングに響いた。しんと静まりかえる部屋の中、キッとハヤトが同じ顔の弟を睨む。
かなり良い力具合で叩いたのだろう、頬が赤くなっていた。


「… なにすんの!」


ゴツン。今度はハヤトのグーがトキヤの頬にヒット。
彼は少しよろめいたけどなんとか体勢を立て直して、ハヤトをキッと睨んだ。


「…やるつもりですか」
「トキヤから仕掛けてきたんじゃん」


そしてあっという間に取っ組み合いが始まりました。
胸倉を掴んだり殴ったり叩いたり足を引っ掛けたり…。もう子供のような喧嘩です。
二人とも芸能界のお仕事貰ってるってこと、忘れてるんだろうなぁ。
それにしても、この双子もこんなふうに喧嘩することもあるのだと感心してしまいました。
喧嘩が一段落ついたら、怪我したところを手当てしてあげなくちゃ。
救急箱のある場所なら、勿論把握してますので。








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