お昼休みに屋上でお弁当を食べることに憧れていたけれど、うちの高校は屋上のドアに立入禁止の紙が貼られている。
入学前に抱いていた夢のひとつはこうして消えていった。
仕方がないので中庭でお弁当を食べることにしたのだけれど、高校2年生の今現在もそれは変わらない。

しかし私にはお弁当ルールがある。中庭に来るのは週に2回、他の日は教室で友達とわいわい食べる。じゃないとさすがに友達とうまくやっていけないのだ、女子って大変!

そしてこの週に2回の中庭昼食、会員は私だけではない。


「ハヤト、お茶です」
「ありがとー!」


この双子まで何故か参加している。
私になんの断りもなく、彼等は側でいつも昼食を取っているのだ。
双子のイチャラブを見せつけられながらご飯を食べるのは、なんとなく憂鬱なものである…。


「…はぁ」
「あれ、どしたの名前ちゃん」


不意にため息を漏らした私に、ハヤトが首を傾ける。
膝の上のお弁当を見ながら、私はまたため息を漏らした。


「二人とも、別に無理して外でご飯食べなくていいんだよ?」
「は?」


サンドイッチ片手にトキヤが目を丸くする。
彼の手の中にあるタマゴサンドは、もちろんトキヤの手作りだ。前にひとつ貰ったことがあるけれども、料理上手なトキヤなのでやっぱり美味しかった。


「いや、私一人でもいいし…、トキヤ外でご飯食べるのとか苦手そうじゃない?」
「そんなことないです」
「二人ともわざわざ毎回来なくても、」
「…名前ちゃんはボクたちとおべんと食べたくないの…?」
「い、いやそういうことではなく!」


シュンとしたハヤトの隣で、彼の表情を見たトキヤが私を睨みつけた。ち、違う私は悪くない!


「…あなたが、嫌だというのであればやめますけど」
「い、嫌だなんてそんなことは」
「ならいいでしょう?私もハヤトも、あなたとこうやってご飯を食べることは案外気に入っているのです」


ふわりと笑ったトキヤに続いて、今まで下を向いていたハヤトも笑った。
なんだかよくわからないけど恥ずかしい。


「あっ、名前ちゃんの卵焼き美味しそう…」


目を逸らした私に近寄って、ハヤトが食い入るように弁当箱の中身を見つめている。


「本当ですね、綺麗にやけてますし」
「あ、ありがとうございます…」
「ねーねーちょうだい!」
「は?」
「こういうのはどうでしょう、私とハヤトのおかずと、あなたの卵焼きを交換する」
「ちょっ、待ってトキヤもなの!?」


私がうろたえている間に、彼等の間で話がどんどん進んでいく。そうこうしているうちに、気づくと私のお弁当箱の中からは卵焼きが2つ消え、ミートボールとミニトマトが現れていた。


「あ、甘い…」


卵焼きを食べたハヤトが、少し顔をしかめる。うちの卵焼きは、おばあちゃん仕込みで甘い卵焼き。それに醤油を少し垂らして食べるのもまた一品!


「ほう、なかなか美味しいですね、もっと甘くてもいいかもしれません」
「え!?」
「トキヤってばすぐ何でも甘くするんだから!」
「えっ」
「甘い方が美味しいじゃないですか」


トキヤって…もしかして甘党だったの?いやもしかしなくても甘党だろう。そういえば、この前購買でプリンとエクレアとタルトを買ってたっけ…。
でも普段は甘いものなんて食べてるの、見たことない。


「… トキヤさん」
「なんです?」
「甘党なんですか?」
「甘いものは好きなんですが、太りやすいので控えているんですよ。はぁ…、ハヤトかうらやましいです」
「ハヤトは太りにくいの?」
「うん。どれだけ食べても太らないよ!でもボク、甘いものはあんまり好きじゃないんだ〜!野菜とかヘルシーなのが好きで!」


なんだこれは。言ってること真逆にしか聞こえないんだけど、この人達合ってるのか…?
ハヤトが野菜好きでトキヤが甘党…こんなこと考えたことなかった。
だってハヤトも、友達からお菓子貰って喜んだりしてるし。


「名前、今度一緒にクッキーでも作りませんか?」
「やめてー!!トキヤのクッキー甘すぎるよ!!」
「仕方ありませんね…、あなた用にはベジタブルクッキーを作りますよ。カボチャペーストで、砂糖はあまり使わないでおきましょう」


なにそれ美味しそう…と想像していると、耳に入ってきたのは予鈴。
やばい!お弁当全然食べてないじゃない!
卵焼きだけすっかりなくなったお弁当箱の蓋を閉め、教室までの道を3人で走った。








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