一ノ瀬ハヤト、兄。
一ノ瀬トキヤ、弟。
とってもそっくりなこの双子のイケメンくんたちは、私と同じマンションに住んでいる。


「ねぇトキヤ、ボクのパーカー知らない?」


こっちがハヤト。元気で明るくちょっと天然…なフリして意外と策士で頭がキレる。


「それなら先ほど洗濯したばかりですよ」


こっちはトキヤ。クールで真面目、ちょっと怖い…と思いきや、意外に可愛い一面もある。


「ええっそんなぁっ!あれ着て行こうと思ったのにー!」
「まったく…私のを貸しますから、ほら」


トキヤが差し出したのは、紫色のチェックのパーカー。ハヤトはにこにこしながらそれを羽織った。
本当に仲が良い。双子だけあって、波長も素晴らしく合う。お互いがなにを考えているかすぐにわかってしまうらしい。
でも彼らがぱっと見真逆の性格をしているのは、二卵性の双子だからだ。
顔もよく見れば違うところがある。目とか。


「あっ、ハヤト、そういえば私の鞄、あなたに貸したままじゃ」
「そうだった!待って今持ってくる」


うん、でもいくら仲が良いとはいえ…こんなに貸し借りしまくってるの、ちょっと気持ち悪くない?姉妹ならわかるけど兄弟…、たとえ顔が瓜二つで似合うものが一緒でも、こんなにお互いの物を共有するのは何となく寒気がしてくる。
そういえばこの間も、ハヤトがトキヤの腕時計をして、トキヤがハヤトのアクセサリーをつけてたっけ。


「すみません名前、もう少し待ってください」
「うん」


それで、今日はなぜ私が彼らの部屋に来ているかというと、3人で映画を見る約束をしていたからだ。ハヤトとトキヤが、脇役だけど出ているのである。彼らは小さい頃から劇団で活躍して、芸能界デビューすることを目標としている。


「ハヤト!早くしてください、遅れます!」


もういいよ違う鞄もってけばいいじゃない…と思いながら、携帯の時計を見た。まだ間に合いそうだし、無理だったら次の上映に先伸ばしすればいい。
トキヤは完璧主義だ、きっと今日のスタイルにはその鞄がベストなのだろう。
…それより、


「ねぇトキヤ」
「なんですか?」
「さすがにお揃いのカットソー着てくのはどうかなって思う」
「いいじゃないですか双子なんですから」


双子がお揃いの服を着て可愛いとか思えるのは小学生までだよ。あんたたちもう高校生じゃん。というのを全て込め、ため息を吐き出した。
こいつら、服も一緒に選んでるのか…いや、いいなと思った服は片割れの分も買ってくるのか。一度クローゼットの中を拝見したいところ。


「…仲がよろしいことで」


やっとハヤトが鞄を持って飛び出して来て、トキヤが肩をなでおろす。その鞄に財布やら手帳やらを詰め込み、肩にかけたところでハヤトの手が伸びた。


「襟が寄れてるよ」
「ありがとうございます」


はぁ。本日二度目のため息。もう好きにイチャイチャしててください。
ナルシストも怖いけど、年の近すぎるブラコンも引くほど怖いです。








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