お正月なんて私たちにはないのだ。いや、休日という休日は全く関係ない。それが、お正月だとしても。
私もハヤトくんもアイドルで、元旦の今日から生放送の番組に引っ張りだこである。ハヤトくんはバラエティー番組の司会を、今日だけでも3本。私はそのうちの1本はゲストとして、1本はサブ司会として、そしてもう1本は中継先のリポーターとして出演していた。なんていうミラクル。しかし生放送だ、休憩なんて入らない。きっと疲れてるであろうハヤトくんは、全くそんな色なんて見せなかった。
プロだなあ。わたしも芸歴は同じぐらいだけど。関心しちゃう。


「おつかれさま」
「わ!」


全ての番組が終わって、控え室に行く足も重くてその辺の椅子に座ってぐったりしていた私に声を掛けてきたハヤトくん。声をかけると一緒に、いきなりほっぺに冷たい感覚が走って驚いてそちらを振り返る。


「ごめんごめん、そんなに驚くと思わなくて」
「あ…」
「はい、甘いものがよかったよね?」
「うん、ありがと」


手渡してくれたのは、さっき私のほっぺにくっついた冷たいココア。ぷしゅり、とプルタグを引っ張ってゴクゴクと半分ぐらい一気に飲み干す。私は疲れたときは甘いものを摂取したい気分になる。そのことを、彼はちゃんと覚えていてくれていたんだなあ。


「この後は?」


ハヤトくんが隣に座って、自分のコーヒーのプルタグに指をかけながら問いかけてくる。


「ないに決まってるじゃない…これ以上働けないよ…ハア」
「だよねえ、僕も勿論ないんだ、ねえ、名前の部屋行ってもいい?」


最後のは耳元で小さくいわれた。ドキリと跳ねる心臓。ハヤトくんは私の恋人で、そんなこと別に聞かなくたって答えは一緒なのに。


「う、うん」
「じゃあ先に戻ってて!僕はスタッフさんに挨拶してくるから」
「え、うん、わかった」


ハヤトくんは私の返答を聞くと、コーヒーをごくごく飲み干してゴミ箱に缶をポイ。 そしてすくりと立ち上がって走っていった。
あ、そういえば、


「なにか食べたいものとかあるかな…」


ポケットから携帯電話を取り出してメールしてみた。


「な、にか、ほしい、もの、あ、る?…っと……送信っ」


送信完了画面が出て、携帯電話を閉じる。ふう、と一息ついたら、すぐにマナーモードの携帯電話が震えた。


“なにもいらないよ!きみがいれば!"


恥ずかしくて私には絶対打てもしないメールの文面。
ハヤトくんってどうしてこういうこと、すんなり相手に伝えることができるんだろうか。 火照った頬に、飲みかけのアイスココアをくっつけた。



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