寒い。手のひらにはあ、と自分の息を吹きかけて暖を取る。それでも寒さはあまり柔らがない。手袋をもってくればよかった。それどころか、マフラーさえも忘れてきてしまったのだ。ボクは急いでいた。
彼女との待ち合わせの時間に遅れるわけにはいかなかった。ギリギリ変装が出来るぐらいの伊達眼鏡だけしか持ってきていなかったのだ。まさかこんなに寒いだなんて。そういえば、昨日のおはやっほ〜ニュースの週間天気予報で、「明日は冷え込みます」って言ってたような。うっかりしていた。


「ハヤトくん!」


走って駆け寄ってきた可愛い女の子。彼女はしっかりとマフラーを巻いて、手袋もして、帽子も被って、完全防備。薄手のジャケットのボクとは大違いだ。


「ごめんね、寒かったからマフラーとか取りに戻っちゃって」
「だいじょうぶだよ〜」
「え、鼻が真っ赤だよ。寒そう!」


貸してあげる、とピンクの手袋を片方差し出される。


「手袋のびちゃうかもしれないよ?」
「いいよ、洗濯すればきっと縮むよ」
「そっか、ありがと」


きみの優しさが一番暖かいんだけどなあ。そんなことを思いながら彼女が外した手袋をはめる。暖かさがまだ残っていた。



しあわせを
あなたに




そして手袋をしていない手をお互いに繋いで、今日のデートがようやく始まる。





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