好きという感情を知らなかった、だから




僕の大切な

君の大切な人は

僕ではない



この気持ちに気づいたのはいつだっただろうか。もう忘れた、それぐらい、俺はずっと前から名前だけを見ていた。どんな美人でも、可愛い顔の女でも、名前には叶わなかった。

俺は、人を好きになると言う感情を知らなかった。だから、名前にどうやって接すればいいのか、わからなかった。同時に、愛情という感情について不器用であって、鈍かった。 俺に出来ないことがあるということが気にくわなかったが、これだけはどうしようもないことである。

なので、俺は自分が名前を好きで名前に何をして上げることができるかなんて、考えられなかった。そして、名前の本心すらもわからなかった。

名前が、あいつを、ラビを見ていることはよくあった。俺が名前を見ているのと同じぐらい、名前はラビを見ていた。そう、俺が近くに居ようとも、話をして居ようとも、目線はラビ。あいつを追っていた。
これほどまでに、人を憎いと思ったことはなかった。俺は、浅はかで、汚い人間なんだと思った。

どうしようもないのだ。名前は俺を好きなわけではない。こればかりはどうすることもできない。ただ、その現実に明け暮れていることしかできない。
何で、俺じゃないんだ。名前は何で俺を選ばなかったんだ。 なんて、そんなことばかりが頭をよぎる。そして、ラビを羨ましく思いながらも嫉妬をする。

あぁ、愛情なんて、面倒くさいだけではないのか、やはり。俺は、愛だの恋だのという単語とはかけ離れた世界で生きていく方がいいのではないか。だって、これ以上名前を好きでいても、名前は俺を見てくれることはないだろう。



名前がラビとつき合い始めた今、俺は彼女達にとっては邪魔でしかない存在でしかないのだ。

いっそ、泡にでもなって消えたい気分だ。
人と関わることを拒んでいた俺が、名前を愛していることを、神は許さないのか。





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