空は青く綺麗な空気が澄み渡っていて、ぽかぽかとした暖かさが風に乗って私の肌をくすぐる。白い雲はぽわぽわ、何の悩みもなさそうに頭の上をゆっくりと時間をかけて通り過ぎていく。道の脇に咲いている花は、その生命を見せつけようと言わんばかりに咲き誇っており、コーヒーや紅茶の香りでジムを見やるとお昼時なのでお客の出入りが目覚ましい。今日もサンヨウシティは平和そのものです。




「名前、やることないなら手伝えよな」
「なによ、私は別にウェイトレスじゃないんだけどなあ」




優雅にミルクティーを飲んでいたところで、入ってきたポッドがぐちをこぼした。ここはサンヨウジムのレストランのホールではなくて、彼ら三つ子の自宅のリビングである。もうわざわざレストランでお茶をするのもあれかな、と思ったので、デントに聞いたらすんなりいいよと言われて、この場所に落ち着いたのだ。




「どーせ暇なんだろ」




水道の蛇口をひねって念入りに手を洗い出したポッドが、またもむくれた顔をして私を見た。私は飲みかけのミルクティーを、ティーカップの皿の上に戻し、ひとつ伸びをする。なんだか眠くなってきた。




「皿洗いぐらいなら手伝ってもいいけど」
「まじで?じゃあコーンに言ってく、」
「こらこら、名前をこき使わないの」




エプロンを折り畳みながら入ってきたのはデントだった。困ったように笑って、私が座るソファの背もたれにエプロンを引っかける。そしてそのついでに私の頭にぽん、と触れて、彼もまたタオルで手を拭いているポッドのように手を洗い始めた。なんでここは石鹸の香りすら美味しそうなのかしら。




「そうだポッド、コーンが探してたよ。倉庫の中を探したけど、ティーバックが見つからないとか」
「えーなんだよめんどくせ…」




ため息をつくと、ポッドは入ってきたドアから逆流するように出て行ってしまった。せっかく手を洗ったというのにね。




「デント、休憩?」
「そうそう、コーンからお許しが出て」




お店の混み具合などを判断して、休憩指示を出すのはコーンの仕事だそうだ。一応、何時から休憩というのは基本的には決まっているらしいんだけれども、それでもお昼時や夜のご飯の時間は混み合うので、その状況を見計らっての休憩らしい。今日は平日の半ばということも手伝って、お昼だとはいえそこまで混んではいなかったらしい。

デントは私の隣に腰かけると、にっこり笑って頬にキスをしてきた。なんでこういうことがすんなりできるのだろう!私はいつも意地を張ってしまうから、さりげなくキスなんてできたもんじゃない。




「……、誰か見てたらどうするの」
「今更じゃない?」
「そ、そうだけども」




確かにこういう現場を幾度となく彼の兄弟には見られてきた。その度に「あーそういうことは自室でやってください」とコーンにあしらわれたり、「お前らほんと仲いいよな」とポッドから真面目な意見をもらったり。恥ずかしいのは私だけのようです。




「それに誰も来ないよ」




ここに来るとしたら、デントかポッドかコーンか私しかいないから、その「誰も」というのは、今お店で忙しく働いているあの二人しか該当しない。確かにしばらくは来ないとおもうけれども、こんな真昼にリビングでキスだなんて、なんだかいけないことをしているような錯覚に襲われる。




「この先もしちゃう?」
「ば、ばかっ」




にっこり言うもんだから逆に困る。視線を足下に向ければ、嘘だよ、という優しい声と一緒に頭を撫でられた。さっきまで眠たかったはずなのになあ。




Hello,Baby!





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