ポッドくんは、ポッドくんみたいに真っ赤な苺を器用に半分に切って、それをスポンジの上に敷いたクリームの上に等間隔にのせて、そしてまたクリームを塗って、スポンジをのせた。クリームの甘ったるい匂いが私の鼻先をくすぐる。そしてその作業をあと2回繰り返して、ホールケーキの周りをまんべんなくクリームで覆った。真っ白。それから横に、私にはできないようなデザインを、それもまたクリームだけでやる。体育会系っぽいポッドくんからは想像できない器用さである。
「うーん」
「どうした?」
「甘いものとポッドくんが結びつかない」
「…、よく言われる。悪かったな、どうせ辛いものと結びつくんだろ」
口をとがらせて、ホールケーキのデコレーションを続けるポッドくん。実はポッドくんが作るお菓子って、デントくんやコーンくんが作るお菓子よりも良い感じに甘くて美味しい。それはみんなが知っていることで、この意外性といったらないだろう。コーンくんはスープが得意らしい。そしてデントくんはお茶。
「確かに、どっちかというと辛いものかも」
「そーですかい、すいませんねまったく」
ふん、なんて言って、顔を背けるポッドくん。でもまたケーキと睨めっこして、完成へ近づくべく作業を進めていく。その真剣な横顔が好きだなあ。いつもはへらへらしているのに、なんでこういう瞬間になるとこんなに格好いいんだろう。いや、まあ、いつも格好いいんだけどもね。
でもやっぱり、ポッドくんがケーキを作るなんてあまりにも似合わない。そうだなあ、似合うとすれば、
「ラーメンかなあ」
「うちにはそんなもんはねぇ・・・」
呆れたように言ったポッドくん。それもそのはず、ここは洋食店である。でもこの前ポッドくんにラーメン食べたい、って言ったら、作ってくれたなあ。とっても美味しかった。なんでどれもこれも美味しく作れるんだろう。そしてラーメンを作っている姿がとても似合っていた。
なんて、そんなことを思い出しているうちに、ケーキは完成目前を迎えていた。そのケーキの上にのせるプレートに、「Happy Wedding」とホワイトチョコレートで書いているポッドくん。そっか、それは結婚式のなんだ。だからそんなに大きいんだ。それにしても、まるで雛形のように綺麗な文字。ポッドくんって、お菓子作りもそうだけど、見かけによらず字も上手い。デントくんもコーンくんも上手。きっと練習したんだろうなあ、だってオーダーの字が汚かったり、こうやってケーキのプレートの字が汚いなんてダメだもの。字の練習してるポッドくんを思い浮かべると、なんだか顔がにやけてきた。
「なにお前、きもちわるい」
「いや、なんかいいなあって思って」
「ケーキ?」
「そう」
「・・・いつかデントかコーンにでも作ってもらえよ」
「え、なんで、ポッドくんが作ってくれるんじゃないの?」
はあ、とポッドくんがため息をひとつ。お前わかってねーな、なんて言いながら、ちょっと顔が赤いよ、どうしたの。
You say,
「俺とケッコンすんだから、俺が作るわけねーだろ!」